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パズドラ大ヒットの秘密はビジネスモデルの進化
コンプガチャ後の荒野を再生する家庭用機の精神
――ソーシャルゲーム・バブル崩壊後の展望【後編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第39回】 2013年6月14日
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 このように、ゲームコンテンツに対してお金を払うことに理解のある従来のゲームユーザーだけではなく、「ゲームコンテンツに対してお金を払ってくれない人」を取り込むことが、ソーシャルゲームやスマートフォンゲームにおいて重要なのは、やはり背後に口コミの存在があると考えていいだろう。

 「友だちが遊んでいるから遊ぶ」という口コミのようなものは、ゲーム業界の過去を振り返ってもかなり強固なツールになり得る。たとえば、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」で「脳トレ」シリーズが大ヒットしたのは、「みんなが遊んでいるから遊ぶ」という口コミ効果が寄与したことはよく知られている。

 では、どこで収益を得るかだが、当然「パズドラ」でも高額課金プレイヤーはいる。筆者が実際に聞いたものは「3ヵ月で20万円パズドラに使った」という話だが、「パズドラ」の強みは「3ヵ月で20万円パズドラに使う」ユーザーからタダで遊びたいユーザーまで、それぞれのニーズに合わせてサービスを提供できるところなのではないか。

 たとえば、水だけ飲みたい人には水を無料で、料理を食べたい人には料理を提供しそれなり対価を要求する。このように、ニーズの「個人差」に柔軟に対応できたところが、「パズドラ」の勝因なのではないだろうか。したがって、パズドラの評価はゲーム性よりも、ビジネスモデルによって評価されることがふさわしい。それは、「絶対に課金しない」(口コミ、バズ要員)と考える人と、「大量に課金して遊ぶ」(収益要員)という人の両方を取り込めている、進化したビジネスモデルである。

 筆者の知人で、現在「パズル&ドラゴン」を遊んでいるユーザーも次のように話す。「パズドラは曜日ダンジョンとかゲリラダンジョンとか連続ログインボーナスとかで、無課金・課金問わずユーザーを心地よく、ほどよく拘束するのが非常に巧妙。他のユーザーとの競争要素があまりないのに、無課金から課金に移行する確率を高める回路も周到に作り込まれていて、感心しますね」。

「追加シナリオ85円」で、
ビジネスは成り立つのか

 しかし、パズドラのようなビジネスモデルを成功させるのはとても難しいようだ。昨年、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)を辞め独立した池尻大作氏は「『絶対に課金しない』と考える人と、『大量に課金して遊ぶ』という人の両方を取り込むビジネスモデルの成功はかなり難しいです。名刺がわりにつくると割り切るか、大量に課金して遊んでくれる人にむけて作るか、どちらかに絞らざるを得ませんね」と語る。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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