高齢者が生き生きとおカネを稼ぐ!
過疎と高齢化に直面する町の「魔法」

 徳島市から勝浦川沿いを車で1時間ほど上ると、四方を山に囲まれ、まるで川岸にへばりついたような集落が現れる。葉っぱビジネスで知られる徳島県上勝町だ。バスを乗り継いで8年ぶりに現地を訪れ、上勝町の現状を取材した。

「上勝町に今(地域ビジネスの)卵がたくさん生まれています。若い人たちをどう育てていくかが、最大のポイントです」

 こう語るのは、徳島県上勝町の第三セクター株式会社「いろどり」の横石知二社長。葉っぱや花などを料理のつまもの(料理を引き立てるために添えられる葉っぱや枝花など)として出荷する「彩事業」を興し、地域を活性化させた人物である。

 上勝町は1955年に2つの村が合併して誕生した。当時、6000人を超えていた人口は現在1859人(2013年5月1日時点)。上勝町は「平成の大合併」に加わらず、四国で一番小さな町となった。高齢化率は49.38%で、過疎と高齢化に直面する典型的な山間地域の小規模自治体と言える。

 だが、上勝町は一味もふた味も違っていた。高齢者が生き生きと働き、しかも、しっかりカネを稼ぐという、極めて珍しい地域であった。

「彩事業」の成功によるもので、上勝は「葉っぱをお札に変える魔法の町」とまで言われた。地域活性化の成功事例としてテレビドラマ化や映画化もなされ、今や全国でも屈指の元気な町として知れ渡っている。 

 上勝はかつて林業とみかんの町だった。ところが、林業は安い輸入木材に押され、みるみる衰退していった。さらに、1981年に異常寒波でみかんがほぼ全滅するなど、地域経済は大打撃を受けた。この危機を突破すべく特命を受けたのが、農協の営農指導員だった横石さん。地域経済を支える新たな特産品の開発を、託されたのである。