かつてパナソニック(旧松下電器産業)で中村邦夫元社長の懐刀として「聖域なき構造改革」の絵図を描いた男、フランシス・マキナニー。36年間にわたり、数々の日本の大企業で指南役を務めてきた氏は、コンサルや執筆活動を通じて、グローバルで負け続ける日本の製造業を叱咤激励する。その持論は、「全ては現場の改革から始まる」。グローバルで勝てる「スーパーゲンバ」を構築するために、経営者が持つべき視点とは何か。氏の提言に耳を傾けよう。(聞き手/ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、ダイヤモンド・オンライン編集部、まとめ/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

競争力の低下が続く日本の製造業
グローバルで勝ち残る術はあるのか?

――これまでどんな企業のコンサルに関わってきましたか。また、どんなポリシーを持って日本企業に助言し続けているのでしょうか。

パナソニック中村改革の懐刀が落日の製造業に警鐘 <br />“スーパーゲンバ”を構築しグローバル競争で生き残れ<br />――フランシス・マキナニー氏に聞くFrancis McInerney
ノースリバー・ベンチャーズ マネージング・ディレクター(取締役)。英国生まれ、カナダ育ち。トロント大学で経済学を学び、経営コンサルタントに。自身が副社長を務 めたノーザン・ビジネス・インフォメーション社のマグロウヒル売却で注目を集め、ノースリバー・ベンチャーズを起業。パナソニックを筆頭に、36年間にわ たって日本企業のコンサルタントを務める。『日本の弱点――アメリカはそれを見逃さない』『松下ウェイ―内側から見た改革の真実』『パナソニックの 選択――「環境で稼ぐ」業態転換の未来』『スピードの経営革命――なぜ、この企業はIT時代に大勝利をおさめているのか』(共著)『賢明な企業―環境サバ イバルで発展した10社』(共著)など著書多数。

 私は、日本の大企業のコンサルタントを始めて36年になります。これまで日本企業では、パナソニック、NEC、日立製作所、富士通、NTTドコモ、日東電工など、海外企業ではシーメンス、フィリップスなどで経営の助言をしてきました。

 これらの企業は、相互に密接に関連し合う課題を抱えていました。それを解決するシステムをつくり、グローバルな競争力を開発してほしいという考えから、執筆活動にも力を入れてきました。

 日本の製造業の多くは、この四半世紀にわたって海外での競争力が低下し、業績が芳しくない状況が続いている。グローバル市場において、中国、韓国などの競争力が高まるなか、日本企業がポジションを回復するための方程式を提示できたらと思います。

――新たに執筆中の著書『スーパーゲンバ―日本企業が世界で競争力を獲得するための10のステップ』(仮題)などを通じて、今後は競争力を失っている日本の製造業の現場が抱える課題を、詳しく指摘していくつもりだと聞きます。なぜ日本企業の現場は競争力を失っているのでしょうか。

 企業の機能として最も重要なポイントは、顧客情報を競合他社よりも速くキャッシュに転換すること。あらゆる企業活動は、オペレーションにどれだけの顧客情報を組み込めるか、その情報をどれだけ速やかに現金に転換できるかにかかっていると言ってもいいと思います。