次に、株式。特に上場有価証券の場合、日々値段が変動しています。贈与する場合は「その時の時価で贈与することになる」ので、将来的に価格の上昇が見込まれているような銘柄であれば、より効果が上がることになるでしょう。

 しかし、贈与した後、その株が本当に上がるかどうかは誰にもわかりません。

 生前贈与に最も向かない資産は、不動産です。贈与税以外の移転コストがかかるからです。

 移転コストとは、登録免許税と不動産取得税のこと。生きているときに不動産を名義変更すると上記2つのコストが、合わせて5%かかります。100万円分の不動産を動かすと、5万円かかるということです。

 一方で、この不動産を生前に動かさずに、所有している親が亡くなったとします。すると不動産を名義変更(亡くなった時の不動産の名義変更を相続登記と言います)した場合、2025年現在0.4%で済みます。ざっと12倍以上の開きがあるのです。

 不動産は亡くなる前と後で移転コストが大きく異なる資産なのです。一般的には、不動産は「相続が発生してから動かす財産」といえるでしょう。

 このように財産ごとに贈与の特徴について見ていくと、現金が一番わかりやすく、リスクも小さいと思えるかもしれません。

 確かに、現金は移転税もかかりませんし、先述の3点の中では最も生前贈与に向いています。

 しかし、デメリットも存在します。

現金を贈与するときに
多くの人が見逃している「デメリット」とは?

 それは、子どもや孫が「スポイルする可能性が高い」ということです。

 仮に110万円を毎年20年間にわたって2000万円以上、親から子どもに贈与したとしましょう。自分名義でそんなお金があると知ったら、子どもはどうなるでしょうか?

 子どもの1万円の価値は、大人の1万円と異なります。実際の額面の何倍もの価値を感じてしまうはずです。

 実際、多額の贈与を受けた子どもが、「仕事をする気にならない」「金遣いが荒くなった」「変な友達や異性が周りに増えた」などの事態に陥るケースは少なくないのです。

 生前贈与の現場では、「節税のメリット」ばかりが語られます。しかし、そこには「感情」や「想い」が抜け落ちていることが多いと感じます。

 現金で贈与することは最も手軽ですが、渡した瞬間に“完結してしまう”ことがほとんどです。しかし、それでは不十分。

 私は、生前贈与は「資産の翻訳作業」であると考えています。

 数字でしかないお金に、意味、思い、価値観という“言葉”を乗せて次世代に渡す行為が必要なのではないかと思うのです。