年が明けて雪が溶け、春が訪れれば、冬眠から目覚めたクマが一斉に動き出す。おそらく、そのうちの何割かはエサを求めて人里に近づいていくだろう。その時、今秋のように自衛隊の出動が求められるかもしれない。
だが、これまで述べてきたように、自衛隊にもできることと、できないことがある。小泉防衛相が派遣にあたって、「クマ対策のプロである猟友会」からの意見を重視したように、世論に流されて右往左往したり、即断したりしないことが肝要だ。
「銃撃解禁」は望み薄だが
ドローン活用は期待大
自身が出動する可能性があるB氏は、「あくまで想定」と断った上で、陸自によるクマ対策の未来像を語る。
「今回の派遣は、いわばおっとり刀で駆けつけたようなものです。今後も猟友会や警察が『駆除』を担当するとしても、自衛隊は箱ワナの運搬以外にもできることがあります。例えばドローンによる赤外線センサーでの捜索、発見・追跡から、クマを委縮させる爆発音の発生や、さまざまなセンサー技術を組み合わせた早期警戒システムの構築などです」
「私は陸自がこれまで培ってきた野戦の技術は、クマ対策にも応用できると思います。むしろ、ドローンやセンサー技術などは実環境に投入することで、信頼性が高まるのではないでしょうか」(B氏)
陸自のクマ対策は予定どおり11月末日をもって終結した。しかし、これは対策が効果を挙げたからではなく、クマが冬眠に入ったからに他ならない。来春・来秋、その先を見据えた戦いは始まったばかり。災害級とも言えるクマ被害への対策は、平時における自衛隊の活用の限界を私たちに教えてくれた。







