米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻した。破綻は他の金融機関の損失拡大をもたらす。巨額損失の連鎖は止まらず、市場は次なる標的を探す。米国金融機関の苦境は、日本の金融機関にとっても「対岸の火事」ではない。

 市場を震え上がらせるニュースが世界を駆け巡ったのは、米国時間の14日夜(日本時間15日朝)のことだった。米大手証券会社リーマン・ブラザーズのチャプターイレブン(日本でいう民事再生法)適用申請である。

 世界各国の株価はなすすべもなく下落。15日のニューヨーク・ダウは前週末比504ドル安で引け、2001年の同時多発テロ時(684ドル)以来の下げ幅となった。翌16日、日経平均株価の終値も同605円安、3年2ヵ月ぶりの安値を付けた。

 リーマンと韓国産業銀行との出資交渉が頓挫、10日に同社が発表した再建策に資本拡充策が含まれていなかったことで、「単独での生き残りは難しい」と見られていた。実際、リーマンの株価は9月8日から12日までの1週間で8割弱も下落した。

 それでも、リーマンの行方に対して楽観が漂っていたのは事実だ。

 3月に経営が行き詰まった大手証券ベア・スターンズは、米政策当局が背中を押すかたちでJPモルガン・チェースに救済合併された。加えて、9月7日には住宅公社への公的資金注入を含む救済策が打ち出されている。

 多くの市場関係者は「リーマンもまた政策当局が仲介するかたちで救済されるだろう」と睨んでいたわけだ。

政府支援なくして動かない民間銀行
リーマン破綻で未曾有の金融不安に!?

 しかし、13日と14日の両日、大手金融機関とのあいだで断続的に重ねられた会合の席で、当局は彼らが口にした緊急融資などの支援要請を拒み続けた。

 さらには、救済先の筆頭とされていたバンク・オブ・アメリカがメリルリンチの救済合併に方向転換。リーマンと同様株価下落が続き、次に市場から退出を迫られる標的と目されていたメリルが、その前に自ら救済される道を選んだ。

 かくして支援に手を挙げる金融機関は現れず、リーマンはあえなく破綻に追い込まれ、金融システム不安が一挙に噴出した。これが一時的なパニックであれば、いずれは収まる。だが、市場の不安は当たっている。リーマンの破綻は新たな巨額損失の引き金をひく。