橘玲の日々刻々 2013年7月16日

「3年間抱っこし放題」が女性の社会復帰を阻害する
[橘玲の日々刻々]



 核家族というのは、人類史的にはきわめて特殊な家族形態です。日本でも戦前までは大家族での共働きが当たり前で、「3年間抱っこし放題」の家庭などほとんどありませんでした。

 ヒトは長い進化の過程のなかで形成されたOS(遺伝的プログラム)に従って成長します。遺伝子の変化はきわめてゆっくりしているので、ヒトの基本OSはいまも石器時代とほとんど変わりません。こうした近年の科学的知見が正しいとするならば、赤ちゃんは石器時代と同じ環境でもっともすこやかに成長できるようプログラムされているはずです。

 石器時代の育児環境というのはどのようなものだったのでしょうか。

 これには諸説ありますが、狩猟採集で食糧を確保するのに精一杯で、親が子どもの世話をじゅうぶんにできなかったことは間違いないでしょう。そのかわり小さな子どもは、部族のなかの年長の子どもたちが世話をしていました。女の子が人形遊びが好きだったり、赤ん坊が見知らぬ大人を恐れ、年上の子どもについていこうするのはその名残りだと考えられています。

 もちろん、石器時代と同じ育児環境を現代に再現することは不可能です。しかしそれでも、よく似た環境のなかで子どもを育てることはできるはずです。それも、とても簡単に。

 保育園では、さまざまな年齢の子どもが集まって集団生活しています。赤ん坊は、そうした子ども集団にごく自然に馴染むようプログラムされています。閉鎖的な家庭のなかで、母親と一対一で育つようにはできていないのです。

 そう考えれば、耳障りのいい「3年間抱っこし放題」が幸福な家庭を約束するものでないことがわかるでしょう。

           『週刊プレイボーイ』2013年7月8日発売号に掲載
 

 


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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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