21日の参院選まで、後2日となったが、ネット選挙解禁の話題を除けば、論戦は一向に盛り上がってこない。安倍政権の信任投票といった性格となっている。

こうなってしまった最大の要因は、野党が不甲斐なく明確な争点を設定できなかったことにある。それは一方で、本当に争点とすべきことが、選挙後に先送りされてしまったためでもある。例えば、財政再建しかり、年金・医療などの社会保障改革しかり、原発と日本のエネルギーの将来像しかりである。

ここでは、国民の生活に直結する財政再建と消費増税問題を考えてみよう。なぜなら、消費増税を行う場合も、先延ばしする場合も、ともに大きなリスクを伴うからだ。(ダイヤモンド・オンライン編集長・原英次郎)

消費増税の結論は先送り

 安倍政権が実行するアベノミクス=3本の矢は成長重視の政策である。経済成長率が高まれば税収が増え、財政再建が容易になるというシナリオのうえに立っている。その一方、日本の財政状況は先進国中で、最悪であることは周知のとおり。政府の債務残高は対GDP比で、2012年末214%、13年末には224%になると見込まれている。ちなみにアメリカは110%(12年末)、財政状況が悪いと言われるイタリアでも127%(同年末)と、我が国よりずっと低い。

 2012年8月に成立した消費税増税法によって、消費税率は、14年4月に5%から8%へ、15年10月には10%に引き上げられることになっている。ただ、その附則で経済の状況を勘案して増税を停止できるとなっているため、安倍首相は景気の動向を見て、10月に消費税率を引き上げるかどうかの最終判断をするとしている。

 政府が6年ぶりに出した「骨太の方針」でも、「国・地方のPBについて、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比の半減、2020年度までに黒字化、その後の債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを目指す」と、財政健全化の目標は掲げた。だが、選挙が終わった後に「中期財政計画」を策定するとして、これから経済成長、増税、財政の姿がどうなるかついて、具体的な姿は示されなかった。いずれも消費増税についての判断を先送りした形だ。