良い結果が出たときでさえ、激しく怒ったワケ
経営という答えのない営みにおいて、自社の数字とどのように向き合うかという姿勢には、トップに立つ人間の哲学が残酷なまでに反映される。
読者の皆さんの職場においても、少しでも数字を取りつくろって、外部に対して良く見せたいという誘惑に駆られることは、おそらくありふれた感情かもしれない。怒られない程度に達成しやすい目標を設定しておきたいと考えることも、人間の弱さゆえの心理である。
JALでは、特に収支管理の責任者は、稲盛氏から厳しい叱責を受けることが多かった。稲盛氏自身が「会社の業績と成長にとって最も重要な場」と位置づけたJAL再建の業績報告会では、成果報告にとどまらず、改善策や戦略の見直しも真剣に問われ、稲盛氏の怒号が飛び交う緊張感が漂っていた。
私は当時JALの取材をしており、実際に叱られた人からこう語られたものだった。
「イヤ本当に、机を叩いて、もう顔を真っ赤にして怒りますからね。逆に言うと、これだけ真剣に自分のことを叱ってくれる上司は、これまで本当にいただろうかと思いました」(当時、JAL国内路線事業本部長の話)
業績が予測を大きく下回ったときに怒るのは当然として、事前の予測を上回る良い結果が出たときでさえ、激しく怒ったという事実も興味深い。当時の国内路線事業本部長は、予測を上回る利益が出たときにも現状を正しく把握していないのではないかと厳しく叱られたと振り返ってくれたものだ(詳しくは『稲盛和夫が激ギレした管理職の「評論家しぐさ」口だけ社員への叱責が正論すぎて涙目になる…』)。
読者の職場でも、予算を大きく達成すれば部署全体でお祝いの空気になるのが普通ではないだろうか。しかし、稲盛氏が考える経営とは、事実を直視し、立てた計画の通りに物事を進めることである。偶然もたらされた利益に浮かれることなく、正しいことを徹底的に追求する誠実な価値観が、厳格な指導の根底に流れている。







