業績見通しの「上方修正」がよくないワケ

 ひるがえって、現代の株式市場や企業社会を見渡してみよう。見栄えを重視した外部への発信手法が広く横行していることに気がつくはずだ。

 経済ニュースなどで上方修正という言葉を頻繁に耳にするのではないだろうか。日本の株式市場においては、年度初めに達成しやすい控えめな業績見通しを発表し、途中で予想を引き上げる手法がよく見られる。予想よりも業績が良かったという驚きを市場に与え、株価を高く維持する思惑があるからだ。

 不確実性が高い企業ほど、予想を低く抑えがちである。米国企業においても事情は似ており、目標未達による追及を避けるため、容易に達成できる低い目標を設定する傾向がある。

 少しでも自社を良く見せたい、厳しい評価を下げたくないという心理は、人間としてよく理解できる。市場との対話の手段としては賢いやり方のように思えるかもしれない。しかし、ありのままの実態を正確に把握して計画を遂行するという経営の基本からは大きくかけ離れてしまっている。

 わざと低い予想を出し、後から修正を繰り返す行動は、長きにわたる企業の成長において、プラスの効果をもたらすのだろうか。意図的に目標を操作することの重大な副作用を示す学術的な研究が存在する。

 ここで、クリストファー・D・イットナー氏とジェレミー・ミッチェルズ氏が2016年に発表した論文『リスクベースの予測と計画、および経営陣による利益予測』を参照したい。企業が持つ内部の情報環境と、外部へ発表する利益予測の正確性について、詳細な分析が行われている。

 分析によれば、危険や先の読めない出来事をしっかりと計算に入れて予測や計画を立てている会社ほど、世間に発表する利益の予想が正確になることがわかった。同じ傾向は、1年間の予算を決めるときから、ずっと先の長い計画を立てるときまで、計画の長さに関係なく見られた 。つまり、「会社の中にある情報の質が高いと、外に向けて発表する情報の質も高くなる」という考え方が、質の高い経営につながっているというわけだ。