なぜ目標を低く見積もるのが悪いのか

 経営者は、市場の反応を良くしたり、自社にとって有利な状況を作り出したりするために、予測の数字を意図的に歪める動機を常に持っている。しかし、簡単に達成できる低い目標を設定することが会社の中で当たり前になってしまうと、どうなるだろうか。

 組織内には、低い目標を出しておけば怒られずに済むという空気がまん延していく。高い目標に果敢に挑戦して失敗するより、低い目標を確実に超えて見せる方が有能だと評価されるとなれば、誰もリスクを取って新しい挑戦をしなくなる。

 期末が近づくにつれて目標達成に過度に執着すれば、長期的な成長に必要な研究開発費を削ったり、将来の投資を犠牲にして無理な費用削減に走ったりすることになる。一時的な市場からの評価と引き換えに、未来の競争力を自分たちの手で壊してしまうことになる。

 外部への見栄えを気にするのではなく、ありのままの数字を開示し、立てた計画を愚直に実行していくこと――。冒頭で紹介した稲盛氏の電気代のエピソードを思い出してほしい。

 請求書の支払いの都合という表面的な理由に流されず、実際のひと月あたりの電気代を正確に割り出すよう求めた姿勢は、まさに事実を正確に把握するという経営の原点である。

 周りの評価を気にして目標を低く見積もる小手先の技術は、やがて組織の活力を奪っていく。ビジネスに関わる全ての人が、ありのままの実態から目を背けず、厳しく数字と向き合う勇気を持つべきだ。

 愚直に事実と向き合い続けた稲盛和夫が残した教えは、私たちに極めて重い問いを突きつけている。

JAL社員が凍り付いた…稲盛和夫が「電気代の減少」でブチ切れた“恐るべき数字感覚”