日本でも、米国でも、iPhone登場までは、メーカーはキャリアに指示された仕様で、製品を開発するのが通常だった。だが、ジョブズは、この構図を壊しにかかる。そしていまやキャリアによるメーカー支配は、アップルによるキャリア支配の構図に取って代わられることになった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、森川 潤)

アップルのニッポン植民地経営の深層(2)<br />キャリアを悩ます“iPhoneブルー”<br />アップル・通信会社支配の裏側Photo by Naoyoshi Goto

地元一流紙誌でも話題
孫社長・別荘購入の狙い

 うっそうと茂った針葉樹に、馬にまたがった優雅な人々……。それは、まるで西洋のお伽話に出てきそうな風景だった。

 2013年も2月を迎えんとするころ、記者らは米国カリフォルニア州シリコンバレーを訪れていた。米アップルの取材を進めることが訪米の目的だったが、その過程で一つの情報を入手し、現場へと急いだのだった。

 ソフトバンクの孫正義社長がシリコンバレーに別荘を購入したようだ――。現地の一流紙誌にも報道されたこの情報をたどり、購入場所であるウッドサイド地区に足を運ぶと、そこにはお城のような建造物が建ちそびえていた。周りには隙間なく木が植えられ、容易に中を窺うこともできない。

 この地区は、シリコンバレーでも、最も高額所得者が住むことで知られる。その名の通り木々に囲まれたこの丘陵地では、すべての住宅が広大な庭を備え、隣家までキロ単位の距離があるほど。付近の通りは高級車だけでなく、乗馬をたしなむ人々があちこちを颯爽と行き交っている。

 そんな超高級地に、叩き上げでも知られる孫社長が一体、どうして邸宅を構えたのか。