A氏 会社としても、困っているのだと思う。リストラ候補の社員がおとなしく辞めてくれないから、どうしたらいいのか、と……。解雇にすると、裁判になる可能性がある。費用もかさむ。判例に載ることもあり得る。他の社員や取引先にも示しがつかない。

 それならば、退職強要に近い「退職勧奨」(②)を続けて辞表を書くように仕向けるのではないだろうか。

筆者 やはり、「退職強要に近い退職勧奨」が多いのか。

A氏 相談に来るケースの中では、それが目立つ。法律に照らし合わせ、「不当」と言えるのかどうかは微妙だ。私はその会社員が残ろうとするならば、「辞めません」と意思を伝えることを助言する。それを文書に書いて渡してもいい。

 それでも退職勧奨を受けるならば、弁護士に依頼し、内容証明を送ることも考えていいのではないか、とも話す。

相談に来た社員の「その後」
多くが会社に屈して辞めていく

筆者 相談に来た人は、その後どうなるのか。

A氏 相談者とのやりとりから感じ取る限りで言えば、その多くは退職勧奨を受け入れ、辞めていくのだと思う。内容証明を送った気配もない。

完全に「不当」と言えるならば、法の場で争うのかもしれない(③)。しかし、実際は「退職勧奨」と言えるものが多く、「退職強要」と言い切る根拠に乏しい。だから、争おうと思わないのではないだろうか。

筆者 会社は、社員の争う意思を削ぐことも視野に入れているのではないか。

A氏 退職勧奨や強要では、その社員のキャリアや人格などを否定し、プライドを傷つける。当然、争う意欲を削ぐようには考えていると思う。退職勧奨の場で聞くわかりやすい言葉が、「ここに残っても、あなたの仕事はないよ」。これを繰り返し言うことで、自尊心を傷つける。