中国 2013年8月6日

問題点の解決に乗り出した矢先、資金繰りが!!
中国・成都の焼肉店「牛牛福」風雲記【第8回】

なぜ、デートは3回しなければならないのか?

 ある日従業員とのミーティングでこんな会話がありました。

「俺たちの店にはなんでお客さんが来てくれないんだ?」

 「いや、社長。最近思うんですけど、この焼肉という食べ物、うまいんですが、うまさがわかるには時間がかかるような気がするんです」

 「どういう意味?」

 「僕もこの会社に入って4カ月ぐらいたちますが、ほんとのことを言うと、最初は焼肉ってあまりおいしいと思ってなかったんですよ」

 「なにっ、焼肉が最初うまくなかっただと?」(少しムカッとしながら)

 「ところが、何回も食べるうちに、“いや~、この焼肉ってのははまるな~!”という気持ちになってきたんですよね。だから、うちに1回来てもらっただけのお客さんは、2回目来ないんじゃないですかね~」

 この会話のミソは、すべての人間が第一印象だけでその人本来の魅力が見えるわけではない、ということです。

 たった一度のデートで自分の魅力を相手に伝えるのは至難の技です。それと同じで、お店の商品もたった1回で魅力をわかってもらうのは難しい。だったらプロモーションや景品、どんな方法を使ってでも、3回は店に足を運んでもらえるように工夫しなければなりません。

 こうして、「3回来るとお得なVIPカードがもらえちゃう」キャンペーンが始まったのでした。

腹は太るが財布は細る

 肝心要の新メニューの開発は難航しました。

 1週間に何度も新メニュー開発会議を開いては試食を繰り返しました。「地元の人にうける味を開発せよ」がテーマですから、四川風の味もどんどん出てきました。ただし、やみくもに開発していたのではそこらへんの中華料理店になってしまうので、焼肉の特色を活かしたメニューにしなければなりません。

 驚いたことに、うちの調理人は私の厳しい要求に応え、次から次へと新しい料理を考え出してきました。

 1回目で満足のいく味のものは1品もありませんでした。しかし味に対する要求を明確に伝え、2回、3回とつくり直すとおいしいものになっていきました。

 こうした作業を週に3回も続けるうちに、私のおなかはどんどん大きくなっていきました。そりゃそうですよね、食べたくもないものを仕事の義務感でひたすら食べるわけですから。

 それでも私は食べつづけました。そうやっておよそ1カ月過ぎる頃には、50を超える新商品が手元にありました。自分のウエストと引き換えに手に入れた新商品、ワクワクしました。

 こうした努力を続ける毎日でしたが、ある日重大なことに気がつきました。お金がなくなりそうなのです。いわゆる資金ショートです。

 今のペースでやっていくと、およそ2カ月後の月末には資金がなくなる。費用項目、営業収入を一晩かけて何度もシミュレートしましたが、どうやっても2カ月以上もたないことがわかりました。

 正直、資金ショートが2カ月前にわかるなんて経営者としては失格もいいところです。しかし当時、必死に前を見て走りつづけていた私は、少し盲目的になっていたのでした。

 資金ショートが目前になってからの私は、異様な焦燥感に襲われました。何日も何日も悩み、挙句の果てには従業員から「社長、どうかしたんですか? 最近顔色が悪いというか、すごい形相ですよ」といわれる始末でした。

 冷静に考えれば、お客さんが来ていない店が赤字なのは当然、ましてや事業開始直後です。

 資金繰りはすべての経営者が直面する問題ですが、私にとってこの事業は自分の人生を賭けるような気持ちで始めたものでしたから、資金ショートが異常に怖かったし、正直に言うと「あっ、俺あかんわ。社長クビだ」とまで思っていたのです。

 まさに、自分の腹は太るが(会社の)財布は細るという状況だったのです。

牛牛福3号店【撮影/金伸行】

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