2013年8月1日から、生活保護基準の引き下げ、すなわち生活扶助費などの引き下げが実施された。今回は、この引き下げに至るまでの経緯、引き下げがどのように行われようとしているのか、どういう影響が及びうるかを解説し、さらに、黙って引き下げを受け入れること以外の選択肢、すなわち「審査請求」とその可能性を提示する。

「あの人たち、生活保護当事者が困るのは、しかたない」で済ませてよいのだろうか? 

子ども2人の母子世帯で
約1万7000円減額のケースも

ついに始まった生活保護基準引き下げ<br />見直し・阻止するために残された“最後の手段”とは横浜市在住の生活保護当事者(男性・単身)に届いた、2013年8月1日からの生活保護基準改定の通知。理由は、生活保護世帯と一般世帯との消費実態の比較によるとされている(当事者提供)
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 本記事公開前日の2013年8月1日、生活保護基準の引き下げが実施されはじめた。具体的には、生活保護費のうち生活扶助費の引き下げである。政府・厚労省は、「引き下げ」ではなく、あくまでも「見直し」としているが、ほとんどの生活保護世帯で、生活扶助費は引き下げられる。将来的には、住宅扶助など他の扶助の減額も行われる可能性がある。

 特に引き下げ幅が大きいのは、子どものいる世帯である。減額の具体例として、大都市圏の母子世帯(母33歳、子ども12歳・8歳の2名)の場合を上げてみよう。

 吉永純氏(花園大学)作成の資料によれば、引き下げ前に16万9710円であった生活扶助費(I類+II類)は、2013年8月1日には、5650円減の16万4060円となる。現在の予定では、2014年4月1日に現在より1万1310円減の15万8400円、2015年4月1日に現在より1万6970円減の15万2740円となる。育ち盛りの子どもを抱えた一人親家庭にとって、これがどれほど大きな打撃であるかは、説明の必要がないであろう。

「アベノミクス」のもとで行われている経済政策の結果、物価は少しずつ上昇しつつある。もしかすると、経済政策が成功した結果、雇用機会や賃金の上昇へとつながるかもしれない。この33歳の母親にも、就労の機会と充分な就労収入を得る機会が訪れ、結果として、生活保護基準以上の生活が可能になるのかもしれない。でも、8月1日からその世帯を襲ったのは、

「物価が上昇している中で、一家の生存と生活を支える生活扶助費が減額される」

 という事態だ。

 では、その母親は、就労意欲をかき立てられ、就労しようとするだろうか?現在就労しているとして、より高い収入の得られる就労を目指そうとするだろうか?現在の政策を肯定的に見る人々は、「その通り、そのための生活保護基準引き下げだ」と言うのであろう。

 しかし、そもそも、生活保護を利用している母子世帯の概ね40%程度では、既に就労が行われている。就労しているのは母親とは限らない。15歳を過ぎた子どもかもしれない。