昭和ゴムという東証2部上場企業において、社外監査役が事業報告書監査結果について一部物言いをつけている。それに対し、会社は反論のプレスリリースを公表した。また、日経新聞での報道によると、同社の社外監査役が取締役6名に対して責任追及訴訟を起こしたとのことである。会社側は事態を把握していないというプレスリリースを公表した。

 これは、会社法の授業で監査役制度についてのレクチャーの中で出てきた題材であるが、かつては完全なお飾り役職でしかなかった監査役が、ようやく日本においてコーポレートガバナンス上機能し始めたことを示す一つの事例である。

 もっとも、昭和ゴムという会社について少し調べてみると、監査法人の変更、代表取締役の辞任、新株予約権の発行や第三者割り当ての中止など資本政策面でのどたばた劇を繰り返しており、ここ数年間は経営が迷走状態にある。

 よって、今回の社外監査役の反乱も、どたばたの延長として捉えるべきであり、一般企業でも監査役が経営陣に対して敵対的に行動し始めた、と断じるのは早計だろう。しかし、そもそも監査役とは何をする人なのかを再認識するにはわかりやすい事例である。

 授業で出てきたほかの題材としては、東証一部上場の荏原で監査役の1人が株主総会に提出する事業報告書についてコンプライアンス上、重大な疑義があるので承認しないという意見をつけたというものもあった。

米国では必要ない監査役
日本では株主の経営陣監視を代行

 監査役は株主総会に対して、監査の結果が適正であったという監査報告書を提出するが、それを監査役が承認しないという事態は極めて稀である。それゆえ、外から見ていると、監査役が監査報告書を出していることすら忘れがちなのであるが、株主総会にて事業報告書を承認することが監査役の最大の役目であると言っても過言ではない。

 私もベンチャー企業数社の社外監査役に就いているが、株主総会で「監査結果に特に問題はございませんでした」と株主の前で発言するときは少なからず緊張をする。それは何かやましいことを隠し立てしているからではなく、あとで何か問題が出てこないだろうか?という一抹の不安が心をよぎるからである。何か問題があることを見つけるよりも、問題がないことを示すほうが難しい。いくら探しても、チェックしても問題がないから株主総会で問題なしと言うのであるが、それでも問題が後から見つかる可能性は当然だがある。