2013年4-6月期の上場企業の利益は、前年同期に比べて大きく増加した。利益増がとくに顕著なのが、自動車産業だ。営業利益は8社合計で1兆1659億円にのぼり、前年同期に比べて約6割の増加となった。7社合計の円安による増益効果は5101億円と推計されている。トヨタ自動車の14年3月期通期の税引き前利益は2兆300億円(前期比45%増)となり、リーマンショック前の状況を取り戻すだろうと予測されている。

 こうしたニュースを聞いていると、自動車産業は、円安によって順風満帆の状態にあるように見える。しかし、中身を詳細に点検すると、さまざまな問題が浮かび上がる。

利益の状況は会社によって大きく違う

 自動車大手3社の売上と営業利益の状況は、図表1に示すとおりだ。つぎの2点が注目される。

 第1に、売上高は、各社とも対前年比15%前後の増加で、あまり大きな差がない。ただし、増加率は円安による為替の減価率には及ばない。これは、販売台数が減ったことを意味している。

 第2に、営業利益の動向は、会社によって大きな差がある。トヨタが前年比87.9%の増であったのに対して、ホンダは5.1%増に過ぎず、日産自動車は、中国合弁会社比例連結ベースでは2.2%減だ。

 このように、「円安を追い風として絶好調」と言われる自動車産業も、詳しく見るとさまざまな問題を抱えているのである。

 まず第1点を見よう。

 為替レートは、2012年6月にはほぼ1ドル=80円であったが、13年6月にはほぼ1ドル=100円になった。したがって、減価率は25%だ。仮に、販売台数が昨年から不変であるとすれば、輸出と海外生産の売上高は、25%増加するはずだ。しかし、実際の売上高増加率は、これに及ばなかった。これは、販売台数が減ったからだ。とくに、国内販売の減少が著しい。