アマゾンCEOのジェフ・ベゾスが「ワシントンポスト」紙を買収するというニュースは、ここ数年間、暗い見通ししか持てなかった新聞業界にとって大きな朗報である。

 もちろん、ジャーナリズムのイロハも知らないネット商人ベゾスが、アメリカが誇る歴史ある新聞を買い上げたことを憂える業界関係者も多い。当のワシントンポストでは、発表のあったその時、社内は葬式のような雰囲気だったともいう。

 しかし、未だジャーナリズムや新聞ビジネスを成り立たせていくうまい解決策が見つからない現状では、ベゾスのような人にいったん「ビジネスモデルの破壊」をやってもらう以外に、未来へつながる道はないように思われる。

旧経営陣は、本来持っている「強み」を
デジタル時代に生かせず

 なんといってもベゾスは、書店業界を破壊し、出版業界を破壊し、今では日用品から家電まで広く小売業界を破壊している人物。既成概念に縛られた関係者にはとても思いつかない妙策を出してくるかもしれない。いいアイデアの出てこない新聞業界全体が、ベゾスのやることを注視し、それを真似しようとしても仕方がないのだ。

 そして、そのベゾスが「ワシントンポスト」を選んだことに、まず大きな可能性がある。

 ワシントンポストは、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨークタイムズと並んで、インターネット時代にも必ずや生き残る新聞のひとつとされてきた。なぜなら、同紙はワシントンの政治動向と密接に結びついているからだ。

 ウォールストリート・ジャーナルは経済、金融報道で、そしてニューヨークタイムズは広く深い一般報道で大きな特色がある。たとえデジタル版が有料になっても、この2紙には金を払いたい、あるいは仕事上金を払わなければならない人々がたくさんいる。

 それと同じく、ワシントンポストも政治報道で強みを持ち、必ずや生き残るとされてきたのだ。ベゾスが買収したのが、地元シアトルのシアトルタイムズや、アメリカの三大新聞のひとつとされるロサンゼルスタイムズではなく、ワシントンポストであったのは、その意味で重要なのだ。