Googleはどこへ向かうのか。

 モバイルに限らず、IT/ICTという分野で仕事をしていると、この深遠なテーマから逃れることはできない。Androidの行方、ネット広告の動向、スマートテレビの将来――もともとの検索やWebサービスを大きく超えて、社会のあちこちで影響力を及ぼしている。

 そんなGoogleに、限界はあるのか。この問いも難しい。インターネットの膨張が続く限り、Googleの商機は尽きることがなく、同社はどんどん肥大化していく。そんな錯覚にとらわれることもあるし、Googleが存在することで、市場への参入を諦める事業者もいるだろう。それほどの存在であることは、論を俟たない。

 ただ、腑に落ちないこともある。もし本当にGoogleがそれほどの存在なのだとしたら、現在のGoogleの時価総額は、むしろ安すぎないだろうか。それに、市場を限定すれば、Googleよりも大きなシェアを持つ事業者は存在する。たとえば日米市場においてはiPhoneのシェアが相変わらず高いし、Google+という彼らのSNSは相変わらず鳴かず飛ばず、である。

 Googleとて完璧ではない。そしてGoogleがそうした課題のすべてをキャッチアップできるわけでもない――日々Googleのサービスに接していると、ついこの当たり前の事実を忘れてしまいがちだ。なにしろ、たかだか数分のシステムダウンで、世界中のトラフィックの4割近くが減少するような、そんな存在である。

 しかし今春、あるデバイスに触れながら、もしかするとGoogleの限界が近づいているのではないか、と感じるできことがあった。それは、Googleグラスである。

「本人」に固執していなかったGoogle

 Googleが提供するサービスは、プライバシー問題の議論に、常にさらされている。検索履歴やWebサービスの利用履歴などは正しくそのものだし、Gmailがメールの内容を解析して広告配信していることはよく知られている。

 最近ではGoogle Nowのようなサービスもある。Googleが提供する、メール、スケジュール、位置情報等の、利用履歴や通信の内容の解析結果を組み合わせて、その都度必要な情報を最適なタイミングでお知らせする、というものである。たとえば飛行機の搭乗まで4時間を切った時、空港まで1時間強を要する場所にいれば、現在地点から空港までの経路とともに、移動を促すメッセージを知らせるような、そんなイメージである。