ボストンマラソン爆弾事件ではメディアの過熱報道やセンセーショナリズムに批判が集まり、情報源としてのSNSの存在がさらに注目された。その一方で、誤報や名誉毀損、誹謗・中傷なども一気にわき起こってしまった。もちろん、SNSなどの新たなメディアが活用されたことは、より多くの情報が瞬時に共有されたり、既存メディアでは拾いきれない情報を公にするというメリットもあった。ボストンマラソン爆弾事件を発端として、SNSを含むメディアでは何が起こっているのだろうか。

ジョハール被告の特集を掲載しただけで
ローリングストーン誌は「反米的」の烙印

恐怖心と不安からデマが拡散し混乱に拍車<br />事件後のメディアを巡る狂乱は“脅え”の象徴『RollingStone』8月1日号に掲載されたジョハール被告の写真

 ボストンマラソン爆弾事件から3ヵ月後の7月中旬、雑誌「ローリングストーン」が8月1日号にジョハール被告の半生を関係者の証言と共に追う内容の特集記事を掲載すると発表。同時にカジュアルな服装で撮影されたジョハール被告のポートレート写真が表紙に使われることも判明し、爆弾事件の被害者や警察関係者を激怒させた。

 問題となった写真そのものは爆弾事件後の5月5日にニューヨーク・タイムズが資料の1つとして掲載していたものであったが、ローリングストーン誌は同じ写真を表紙写真として使用したため、「爆弾テロ事件の容疑者をロックスターのように扱うのはいかがなものか」という声がボストン周辺で湧きあがった。

 カルチャー誌として知られるローリングストーン誌は、硬派な調査報道記事も掲載しているのだが、ジョハール被告の写真を表紙に使う決断は賛否両論を巻き起こした。それだけではなく、ある意味でアメリカを象徴するはずの伝統ある雑誌が、一部の保守系の論客から「反米的」という烙印まで押されてしまったのだ。