多くの企業が世界中から優秀な人材を獲得しようと競争している。そのなかで、インドでは優秀な新卒者を獲得しようと各社がしのぎを削っている。

 インドのトップ大学であるIIT(インド工科大学)の卒業生で、初任給が1000万円以上のオファーを受けてアメリカで就職したインド人がいることが報じられ話題になった。ITや金融、コンサルティングなど、世界中で著名な大企業がインドに注目し、優秀な人材を獲得しようとしている。

 日系企業はインドへの進出が進み、進出歴が長い企業が出始めているが、依然として即戦力重視の中途採用が中心で、なかなか優秀な新卒を採用できない状況もみられる。欧米企業と戦っていく上で、はたしてこのままでいいのだろうか?

 本稿では、インドの新卒者を中心とした人材獲得競争と日系企業の現状について紹介し、日系企業は今後インドとどのように向き合っていけばいいかについて考えていきたい。

規模も大きい
インドの大学事情

 インドの新卒者の就職事情を見る前に、インドのカレッジ(大学)について説明したい。

 インドの教育制度は旧宗主国であるイギリスの制度を基に作られているため、大学にはカレッジ(分校)がいくつか存在し、カレッジごとに学校のカリキュラムや就職活動が実施される(ただし一部の州におけるカレッジでは、カリキュラムなどの統一化を図っている)。

 独立以来インドはエンジニアリング教育に力を入れ、通常、カレッジを卒業するまで3年かかるところを、エンジニアリング学科は4年としている。インドのトップ大学であるIITはアメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)を目指したともいわれ、独立直後の1951年より設置し、今では15の分校がある。

 インドのカレッジには序列があると人々は認識しており、エンジニアリングについては、IITを頂点として、1万校以上のカレッジがインドに存在すると言われている。