普段は朝ごはんを食べないという男性が、「朝起きたときにコーヒーを淹れている音とか香りがする家電がほしい。なんか幸せな感じじゃない?」と話をしてきた。そこで、「それって、包丁の音がトントンとかもするの?」と聞いたら、「そんな目覚ましがあったら買う!!」と楽しげな様子を見せてくれた。

 1人暮らしなどでコンビニ生活が長い人ほど、「別になければないでいいや」と朝食をスキップしがちである。食事記録を記入してもらう際も、男性の場合はとくに、朝食の欄が空欄になっていることが多い。わりとしっかり食べているな、と思う人でも、ごはん、納豆、キムチ、というパターン化された食事を摂っているくらいだ。

 コンビニ利用の場合、商品がそろっていてラインナップが豊富な時間帯はあれど、朝、昼、夜でメニューが変わるわけではなく、それこそ毎日通っていれば「もう飽きた」「どうせバタバタだし、食べなくていいや」となっても仕方がない。

 食欲は、脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢によってコントロールされている。先の男性が「音が聞こえたら、香りがしたら…」と言ったのは自然なことで、食欲は食べ物の味や見た目などだけではなく、音や香り、食感、「朝ごはんできたから起きてー」なのか「早く起きて食べなさいよ!」なのか…食事に向かう雰囲気の良し悪しによっても影響を受ける。

 また、前述したような食べ物にまつわる情報に加え、脳の扁桃体では食体験の記憶・知識などが統合され、おいしそうだ、まずそうだ、などの判断がくだされる。そしてそれが視床下部に送られ、おいしそう、という判断が摂食中枢に伝われば食欲がわき、まずそう、という判断が満腹中枢に伝われば食欲はわかない。

 朝食欠食派には、実家にいた学生時代からもうずっと朝食を食べる習慣がないという人も少なくないが、「家族はどんなものを食べていましたか?」と聞くと、「適当に、そこらへんにあるパンとかかな?バラバラ」という感じで、食欲スイッチが入るような環境とは言い難い人もいる。でも、そうした体験がすべてを支配するかというと、これから新しく上書き保存することだってできるわけだ。