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インキュベーションの虚と実

“起業ありきで多産多死”の現状を打破する
異色メンター・小澤隆生のインキュベート法

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第34回】 2013年9月2日
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 「制作費を出すから、受託でハウツーサイトをつくってくれ」

 その唐突さに面食らいつつも、古川氏は試しにハウツーサイトの企画書をつくってみた。すると、面白いサイトになりそうだと思い、逆に古川氏のほうから小澤氏へ「せっかくなら一緒にやりませんか?」と伝えた。

 小澤氏は、「上手く行かなかったら制作費の280万円を払ってそれで終わり、成功したら株などその後の話をしよう」と即答。また、リリース後3ヵ月で100万PVに達しなければやめようと決めた。

 09年9月から始めたテストでは3日間で100万PVに達し、ハウツーサイトを続けることが決まった。ところが小澤氏は株式や事業との関わり方について「交渉とか面倒なことは一切言わないから、そちらで決めたもので決定でいい」というスタンスだった。共同創業者として権利を主張しないという。古川氏はやや驚いたが「さわやかでやりやすかった」と当時を語る。

 結局10年から小澤氏は同社の取締役・パトロンに就任。同社は昨年、社名をnanapiに変更し、快進撃を続けている。

「ウチの前で弁当屋やんねー?」
から練り上げた弁当販売の革新

スターフェスティバルの岸田祐介氏

 岸田祐介氏が創業したスターフェスティバルは、210ブランド4000種類以上の弁当、ケータリング商品を提供するデリバリーサービス「ごちクル」を運営している。この6月には提供食数で300万食を突破、2013年6月期の売上高は前期比300%の成長となる約20億円に達した。

 岸田氏は、2002年25歳で楽天に転職した際、30歳になったら起業しようと決め、その通りに2008年2月に楽天を去った。「何をやるか」を決めずに起業へ突き進んだ、日本によくある行動パターンだった。

 そして、楽天時代の上司だった小澤氏が独立して小澤総研を旗揚げしたことを聞き、入れてくれとおしかけた。小澤氏の側近で、小澤流の“起業帝王学”をじっくり半年学ぶことができた。

 「アイデアなし、カネなしで、どうしていいか分かりません」という岸田氏に、「給料は出さないが、来ていいから黙って見て技を盗め」と小澤氏。

 「サラリーマン時代は仕事と指示を出して、間違えたら教えてくれたが、起業となると勝手に学べ、盗めとしてくれたのが、結果的によかった」と岸田氏は当時を振り返る。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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