2020年の第32回夏季オリンピック・パラリンピックの開催地として、東京が選ばれた。久々の大型の明るいニュースであり、関係者の努力に敬意を表するとともに、市民の1人として率直に喜びたい。

 これまで、複数回、夏季オリンピックを開催した都市は、アテネ(1896年、2004年)、パリ(1900年、1924年)、ロンドン(1908年、1948年、2012年)、ロサンゼルス(1932年、1984年)のわずか4都市しかなく、東京は5都市目の栄誉を手にしたことになる。また複数回、夏季大会を開催した国は、上記に加えて、ドイツとオーストラリアを数えるのみである(冬季大会を含めて考えれば、スイス、ノルウェー、イタリア、オーストリア、カナダが加わることになる)。わが国の総合的な国力が正当に評価された1つの証左であろう。

 それに、わが国は例えば、人口一人当たりのメダル数で言えば、実はアメリカ並みのスポーツ大国でもあるのだ。ともあれ、2020年の開催まであと7年、この間に何をなすべきか、せっかくの好機を活かすべく、みんなで知恵を絞ってみようではないか。

世界中から人が集まること自体に意義がある

 オリンピックが東京に決定したことで、早くも皮算用がなされている。都などの試算では、13~20年の7年間で国内経済にもたらす直接の経済波及効果は約3兆円、約15万人の雇用が創出される、という。また民間では、今後7年間に観光産業が倍増すると想定し、約95兆円の経済効果を見込む向きもある。これに安倍政権の国土強靭化計画の約59兆円を含めて、総額では約150兆円規模になるとする(日本経済新聞Web刊)。

 しかし、オリンピックの意義は、経済効果だけではない。世界中から多くの人が集まること自体に最大の意義があるのだと考える。世界中の人に、わが国のありのままの姿をよく見てもらって、日本のファンになってもらうことこそが、長期的に見れば最も国益に資するのではないか。

 何もよそ行きの顔を見てもらう必要はない。多様性に満ちた東京の素顔を見てもらうことが大切だ。要するに、オリンピックは、わが国のソフトパワーを世界に直接発信する絶好の機会なのだ。「安全、安心」や「コンパクト」、「効率性」はもとより、プレゼンテーターの滝川クリステルさんが述べた「おもてなし」の心を全開にさせ、世界中の人に、東京や日本を好きになって帰ってもらいたいものだ。