橘玲の世界投資見聞録 2013年9月12日

ほとんど問題にされない巨大な経済格差、
"法外な幸運"を享受する産油国の実態
[橘玲の世界投資見聞録]

 その象徴がたとえばタックスヘイヴンで、(内政不干渉の原則に立てば)民主的な国家がどのような税制を採用しようが自由なはずだが、これを野放図に認めてしまうと他国の税収が大きな打撃を受けるので、大国連合(OECD)が小国の税制に「内政干渉」することが当然だと考えられるようになった。

 だがヨーロッパ内部でもオランダやアイルランドのように経済振興策として“タックスヘイヴン税制”を採用するところがあり、またイギリスのように他国の税制を利用した企業の税逃れを批判しながら、自身は自治領や旧植民地をタックスヘイヴン化してグローバルな金融ネットワークを構築している国もある。

 いずれにせよ、単純な「主権独立」と「内政不干渉」の原則だけではこの難問を解決できないのは明らかだ。

 主権の独立を突き崩すもうひとつの要因が「人権」だ。

 1970年代までは南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)は内政不干渉の名のもとに見て見ぬ振りをされていたが、今日では国家が明らかな人権侵害を行なうことは許されなくなった。旧ソ連圏や文化大革命下の中国、ポルポトのカンボジアなどで、国家権力が自国民に対してどれほど残虐な暴力を行使するかが明らかになったからであり、また1990年代に旧ユーゴスラビアやルワンダでの虐殺が広く報道されたからでもある。

 こうして、主権国家による制度的な矛盾や人権侵害に対しては国際社会によるなんらかのルールづくりが必要だというコンセンサスが生まれつつある(実際に新しいルールができるまでは数世代に及ぶ長い時間がかかるだろうが)。

 だが主権国家の“法外な幸運”はいまだ野放しのままだ。

"法外な幸運"を享受するドバイ

 中東産油国の王族が莫大な富を有するようになったのは第二次世界大戦後、帝国主義諸国が民族自決の権利を認めて植民地の権益を放棄してからだが、とてつもない富の集積が始まったのは2004年以降のことだ。この年に、これまで20~30ドル台で推移していたWTI原油価格が40ドルを超えた。

 その後、原油価格は右肩上がりに高騰をつづけ、2005年に60ドル、2008年に100ドルに達し、同年6月には史上最高値の147ドルまで高騰した。世界金融危機で翌年2月には40ドルまで反落したものの、その後はふたたび騰勢を強め100ドル前後で高値安定している。

 原油価格は2000年代に入るまでは長期的に低落傾向で、1980年代から90年代にかけては20ドル前後だった。

 それに対して原油生産コストは、IEA(国際エネルギー機関)の推計によると、1バレルあたり平均12.5ドルだ(原油の探鉱・開発コストが4.8ドル、生産・操業コストが7.7ドル)。産油国は、10ドルで生産した原油を20ドルで売って、その差額を利益にしていた。

人工島パーム・ジュメイラにつくられたお城のようなアトランティス・ザ・パーム(2008年末完成)   (Photo:©Alt Invest Com)

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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