橘玲の世界投資見聞録 2013年9月12日

ほとんど問題にされない巨大な経済格差、
"法外な幸運"を享受する産油国の実態
[橘玲の世界投資見聞録]

 ところが大規模で埋蔵量豊富な油井を持つ中東の産油国はそれよりずっと生産コストが安く、サウジアラビアで3ドル(開発コスト1.5ドル+操業コスト1.5ドル)、その他の中東産油国の生産コストも5ドル以下とされている。この生産コストの安さが、アラブの国々の富の源泉だった(角和昌浩「シェール革命が進むも原油価格の大暴落は起こらない」〈水野和夫+川島博之編著『世界史の中の資本主義』所収〉。

 アラブの大富豪たちはこれまで、1バレルあたり5ドルで生産した原油を20ドルで売っていた。それでもあれだけゆたかだったのが、わずか数年のあいだに同じ生産コストで売値だけが100ドル超に上がったのだ。単純計算で利益は約7倍となり、使い切れないほどの富が流れ込んできた。そこで彼らは、まずは自分の国に超高層ビルや豪華ホテルを建て、次いでロンドンで不動産バブルを起こし、プレミアリーグのサッカーチームを買収し、スーパーカーのパトカーを走らせるようになった。

 駆け出しのサッカー選手の例でわかるように、いまでは裕福なのは一部の王族だけではない。国民のすべてが、毎年1億円の宝くじに当たるような異常な世界になっているのだ。

 もちろん私は、このことをもって「石油資源を共有にして世界の貧しい人々に分配せよ」という極論を述べるつもりはない(それではフセインと同じになってしまう)。しかしその一方で、同じ資源価格の高騰がエジプトで政治的混乱を引き起こし、シリア内戦のきっかけをつくったことも間違いない。

[参考記事]●商品価格の高騰がアラブの革命を引き起こした

 虚飾に満ちたドバイのゆたかさを目にすると、「近代」が生み出したとてつもない矛盾に思わず考え込んでしまう。そしてこの「格差」を解消する方途を、私たちはなにひとつ持っていないのだ。

2010年末に訪れたときは、不動産バブル崩壊の影響であちこちで工事がストップしていた。   (Photo:©Alt Invest Com)

 


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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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