政府・与党内で「一院制導入論」が浮上している。小泉純一郎元首相がこれを自民党の選挙公約とすべしと主張し、麻生太郎首相も国会制度見直しの必要性に言及した。しかし私は、参院は不要ではないと考える。「ねじれ国会」において、参院が政治の停滞を招いたとする批判は不当な面がある。今回は、参院がこれまで「良識の府」としての役割を果たしてきたことを指摘した上で、参院がよりよく機能するための改革案を、世界の二院制採用国の制度と比較しながら提示する。

「良識の府」参院がもたらした
「郵政民営化完全決着」

 私がまず言いたいのは、小泉元首相が衆院選に大勝し、郵政民営化の完全決着を成し遂げたのは、参院の「良識的」な法案否決をきっかけとしているということだ。

 あの当時、法案を否決した参院議員たちの中で、郵政民営化そのものに絶対反対だった者は多くない。むしろ、「衆議院で法案が可決されたのは首相の解散権を盾にした多数派工作の結果であり、審議を尽くした結果とは言えない」「法案の内容が妥協の産物で問題がある」として反対・棄権した議員が多かった。これは、「衆議院で可決した法案をチェックする」参院の役割をきちんと果たした「良識的」な判断だったと私は評価している。

 あの時参院が、衆院の判断に迎合して法案を可決していたら、法案成立後も自民党内の不満はくすぶり続けただろう。小泉政権は最後まで権力基盤を確立できず、構造改革も推進できなかったかもしれない。実は「一院制導入論者」小泉元首相こそ、参院の「良識」から多大な恩恵を受けていたのだ。

 ちなみに、定額給付金を巡る政局でも、小泉元首相は参院の「良識」を利用して自説を展開したと言えないだろうか。

「ねじれ国会」で参院の「良識」が
明らかにした日本政治の問題点

 「ねじれ国会」下で、参院を抑えた野党が国会を止めることに批判が厳しい。しかし、参院が国会を止めた結果、「日銀総裁人事」「年金問題」「薬害肝炎」「防衛省問題」「ガソリン税暫定税率」など、これまで国会論戦の焦点とならず、素通りされていた深刻な問題点が国民の前に明らかにされたことは、正当に評価されるべきである。