「以前は夫婦共稼ぎだったし、家事分担もだいたい平等。いい感じの関係でした。ところが、子どもが生まれてからというもの、我が家の主導権は彼女の手に。『上から目線』で、あれこれ用事を言いつけられる。だから、なかなか自分の時間が持てないんです。妻は専業主婦ですが、休日は息抜きと称して、実家に遊びに行ったりしている。文句を言うと『私は上の子の学校のPTA役員もやっている。大変さはあなたと同じだ』って言うんですよ」

 妻には妻で言い分があるようだ。核家族化が進む都市部の女性たちは、出産後の大仕事に1人で立ち向かわなければならない。それなのに大抵の夫たちは、育児や家事やには「ちょっと参加」する程度。妻の混乱や孤独をなかなか理解してくれない。

「出産後は、睡眠もろくにとれず、髪を振り乱して子どもの世話をしなきゃいけません。とくに初産の場合は不安なことばかり。私も母親になりきるために必死でした。主人の助けがないと、どうにかなりそうでしたね。でも彼は、まったく協力してくれませんでした。アウトドアが好きなので、休みの日も仲間と車で遊びに行っちゃうし。代わりに母が来てくれて、助かりましたけど。2人で作った子どもなんだから、もう少し責任感を持ってほしかったです」(30代主婦)

「肝っ玉母さん」は
こうして作られる!

 このように、出産した妻を「冷たくなった」と嘆く男性は多いが、一方で「人間として一回り大きくなった」「頼もしくなった」と称賛する声もある。よい意味でも悪い意味でも、女性は出産を機に別人に豹変するものらしい。その理由はいったい何なのだろうか?日本医科大学大学院医学研究科システム生理学分野の佐久間康夫教授に聞いてみた。

「じつは哺乳類のメスは、妊娠や出産を経験すると脳内で構造改革が起こるんです」

 授乳や子育てなどの母性行動が、ホルモン分泌や化学物質によって促されることは、以前から明らかになっていた。

 たとえば女性ホルモンの「エストロゲン」や「プロゲステロン」、乳腺を刺激する「プロラクチン」などがそうだ。陣痛時に増加する快感ホルモン「エンドルフィン」はモルヒネの役目をして苦痛を和らげるが、「子どもが乳首に吸いつくときも分泌される」との説がある。授乳時や子どもと触れ合うときに分泌される「オキシトシン」も、母子の絆を深める。

 さらに、妊娠すると母性をつかさどる「内側視索前野」の神経細胞(ニューロン)が大きくなり、活性化するという。ホルモンや神経細胞まで変える出産――まさに母親は「脳内革命」を経験するといってよい。

 ところが最近、「母親脳」には別の変化が起こっていることもわかってきた。なんと「記憶力」や「学習能力」、さらには「度胸」まで備わる、というのだ。