テレビドラマ「半沢直樹」が大ヒットして終了した。筆者も「半沢直樹」の原作者と同じ銀行の出身だ。私は基本的には、銀行員とは自らを磨き社会に役立つ職業だと思う。だが、残念ながらドラマで描かれているような世界は、少なからず実在する。そして、日本が金融立国として再生するには、こうした「内部の論理」優先のカルチャーを変革、克服していかなくてはならないと強く感じている。

 テレビドラマ「半沢直樹」の大ヒットは、当初、銀行出身の筆者でさえ意外であった。しかし、よく考えてみれば、銀行員というものは世間一般にはエリートとされ、信頼できる人種の象徴のように思われていたところに、突如、不正の横行やドロドロした行内抗争が暴かれたドラマが出現したのだから話題を呼ぶのも無理はない。今回は、「半沢直樹」で描かれているような銀行員の「生態」が実際にはどうなのか、筆者なりに検証してみたい。ただし、検証の対象は大手銀行、いわゆるメガバンクについてである。

 筆者は長年銀行(旧三菱銀行、現三菱東京UFJ銀行)に勤務し、その間に数えきれないほどの有能かつ尊敬すべき上司・同僚に恵まれてきた。そのことについては、感謝してもしきれないほどである。今回は、ドラマに即して話を展開するために銀行の陰の部分も少々描かざるを得ないかもしれないが、銀行員は、本来は自らを磨きつつ社会の役に立つことができる素晴らしい職業だというのが、筆者の基本的な立場である。その上で結論から言えば、残念ながら「ドラマで描かれているような世界は、少なからず実在する」ということになってしまう。そして、それを改めていかない限り、金融立国はおぼつかない。

支店における不正はあるか

 銀行員と呼ばれる人間の多くは、支店に所属している。支店は、言うまでもなく、顧客対応の最前線である。業務は大きく分けて、預金や送金を扱う窓口業務、個人や個人事業主向けの渉外業務、そして企業向けの貸付を担当する貸付業務に分かれる。