最近は企業の海外進出が盛んになったことに伴い、アジアを中心とした国々に赴任、駐在する方が多くなりました。かつては、海外で生活をした経験のある帰国子女などが選出される人材の中心でしたが、いまや英語が全く話せないような人でも、ある日突然、海外赴任、駐在を命じられることも珍しくありません。

 では、ある日突然、海外転勤をすることになったら、どんな生活、仕事、人間関係が待っているのでしょうか?今回は、実際に海外赴任、駐在を命じられ、現地法人で仕事をすることになった方の事例(ベトナム、インド、シンガポール)をご紹介しましょう。

会社を辞めようと思ったときに
舞い込んできた「ベトナム駐在」

 Aさんは、新卒で入社して以来働いてきたこの会社を退職しようと考えていました。そこで、悩みながらオーナーのもとへ相談に行くと、こんな言葉が返ってきました。

「お前がそろそろ仕事に飽きているのはわかっていた。じゃあ、新しいチャレンジをしてみるのはどうだ?」

 そうして、オーナーはAさんに、ちょうど買収したばかりのベトナム現地法人での駐在の話を持ちかけたのです。

 Aさんはリーダー、マネジャー、シニアマネジャーと成長の階段をのぼってきたものの、30歳を過ぎてからはチャレンジの機会を失っていました。リーマンショック後に辞めようと思いましたが、ここで辞めるのも何か格好がつかないと踏ん張り、その後景気も回復。しかし、危機が去るとすっかり仕事がマンネリ化してしまい、退屈してしまっていたところでした。

 そんなときに舞い込んだ駐在の話だったため、ベトナムには行ったこともありませんでしたが、一度まずは出張に行かせてほしいと話をし、出張することになりました。

 気候も良く、食べ物も合う。そして何よりベトナムの活気ある様子に惹かれました。若者、子どもが多く、とにかく活気があるのです。この様子を見て、これはやり甲斐がありそうだとAさんは確信し、駐在を決めました。思ったよりもホーチミンは発展しており、さらに日本からは直行便があるため、何かあれば日本にもすぐに戻って来られるという良さもありました。

 しかし、出張ではなく、駐在してみて初めてわかったことがあります。そこそこ英語には自信のあるAさんでしたが、思いのほか、英語が通じないのです。当初、ベトナム語は一切わからない状態だったものの、なんとか会話ができるようにと、今はベトナム語も勉強をしています。