かつて、TBSで『クイズダービー』という番組があった。20年以上も前に終了した番組である。十年ひと昔というが、ふた昔ともなると記憶が定かでなくなる。それでも、次の出題はいまでもよく覚えている。

口紅の原価はおいくら? <br />「ちまちまと原価計算する人々」の存在が、<br />企業の操業度不足を生む

 答えを知りたい読者は、2012年の復活特番で同様の出題が行なわれているので、当該ウェブサイトを参照していただきたい(クイズダービー復活特番)。今回のコラムは、この「答え」に関連した商品を扱う化粧品業界が対象である。

 経営分析の観点から見て、化粧品業界が他の業界と比べて大きく異なる点は何だろうか。最大の特徴は、売上原価と販管費の構成割合にある。

 次の〔図表 2〕は、売上高原価率(売上原価を売上高で割った比率)と、売上高販管費率(販売費及び一般管理費を売上高で割った比率)を並べたものだ。トヨタ自動車、イオン、パナソニックも算出してみた。直近決算期の売上高順としている。

口紅の原価はおいくら? <br />「ちまちまと原価計算する人々」の存在が、<br />企業の操業度不足を生む

 トヨタ、パナソニック、イオンの売上高原価率が60%~80%であるのに対し、化粧品各社の売上高原価率は20%~30%の間に集中している。売上高原価率が20%を割っている企業が2社もある。他方、化粧品各社の売上高販管費率は、50%~70%に達する。トヨタの売上高販管費率12.4%と比べると、化粧品会社の売上高販管費率は際だって高い。