EUの電力システムの要諦は国際協調と分権構造を同時に実現する絶妙なバランス構造にある。EU統合の一環として、各国で分断されていた電力市場を広域の統合市場に移行させるため、競争構造を確立したうえで、電力自由化や発送電分離により統合市場を前提とした競争政策を先行させた。拡大する国際間の電力融通、再生可能エネルギーの変動対策のために広域運用に資する送電網整備、国際間の送電に起因する混雑調整への対策が進められたのだ。

 欧州の広域運用で注目すべき点は、広域運用に必要な機能が複数の機関に分散されていることだ。欧州の広域運用では、EU委員会がEU電力指令の履行を各組織に求めることで、規制機関を通じて電力システム全体にガバナンスを効かせる役割を果たしている。

 このEUの電力統合市場構築での大きな特徴としては、以下の5つが挙げられる。

① EUによるガバナンス

 EU電力指令を策定するEU委員会を頂点としたガバナンス構造が明確であり、統合市場の競争環境が徹底されている。

② 広域運用機能の分散化

 送電網整備や送電網運用ルールの方針策定と、送電運用調整や連系線市場運用という実行支援の機能が分離されている。

③ 送電会社の競争原理

 送電会社は、インフラファンドや海外送電会社などからの出資を受けており、電力会社からは独立している。また、各国の送電会社は、国内における需給調整市場を自主運用している。

④ ファイナンス選択肢の拡大

 市場資金を活用しやすい仕組みが整えられている。実際、再生可能エネルギーを需要地に送電し、広域の供給安定性を確保する商業的な送電システム(マーチャントライン)構築において、第三者の投資による事業が採用されるなど、積極的に活用されている。

⑤ 再生可能エネルギーの接続義務化

 送配電網への発電設備の接続を、原則として送電会社の義務としている。また、再生可能エネルギー導入については、国ごとに数値目標が与えられ、送電会社はその目標達成に協力する。

 なかでも上記①のとおり、EU委員会を頂点に機能を複数の機関に分散させている点は重要だ。役割や権限を分散させることで、各国の送電運用の責任や自律性と、EU統合市場としてのガバナンスという、時に相反し得るテーマのバランスを図れるからだ。各国の事情をある程度くみ取りながら、EU電力指令を実現させていこうとする意図がうかがえる。