「西の阿久根に東の白井」
前白井市長が憤る専決処分の顛末

 阿久根市が大揉めに揉めていた頃、東日本のある都市でも専決処分をめぐる大騒動が起きていた。千葉県白井市で、行政関係者の中には「西の阿久根に東の白井」と囁く人もいた。もっとも、専決処分に至るまでの経緯とその後の展開は大きく異なっていた。

「市民の利益を考え、そうせざるを得ないと判断して行ったものです。市民は利益を得ているのに、なぜ、私個人に責任を求めるのか……」

 憤懣やるかたなしといった表情で語るのは、白井市の横山久雅子・前市長。「市長時代に行った専決処分は違法だ」と住民に訴えられ、1審、2審ともに敗訴。専決処分で支出した市の予算約2363万円分を市に賠償せよと命じられた。横山・前市長はこれを不服とし、9月10日に最高裁に上告した。

 千葉県の北西部に位置する白井市は、人口6万2447人(2013年8月末)。もともとは純農村地帯で、人口1万人ほどだった。都心から30キロの近距離にあることから、千葉ニュータウンの開発エリアとなった。

 町と都心とを結ぶ北総鉄道(京成電鉄の子会社)が1979年に開通し、人口は爆発的に増加。5万人を超え、一大ベッドタウンへと変貌していった。そして、2001年4月に市制に移行した。白井市の誕生である。

 急成長する典型的なニュータウンの白井市は、ある課題を抱え込むことになった。新住民の通勤・通学の足となる北総鉄道の運賃だ。

 北総鉄道(印旛日本医大駅―京成高砂駅間の約32キロ)は、1979年から順次延伸させていったが、千葉ニュータウンの開発計画の縮小により乗降客数は伸び悩んだ。また、バブル期の建設費の金利負担も響き、累積赤字を増大させていた。

 このため、運賃アップを8回(消費税率改定分を除く)も繰り返し、右肩上がりに上昇していった。初乗り運賃は最高290円。周辺の私鉄の2倍前後に相当し、通学定期にいたっては4倍以上。全国の高運賃鉄道の中でも3本の指に入るといわれている。

 生活に大打撃を与える高運賃に、利用者の不満が爆発した。「北総線の運賃値下げを実現する会」(以下・北実会)が結成され、値下げを求める運動が始まった。メンバーのほとんどが通勤・通学で北総線を利用する白井市や印西市などのニュータウンの住民で、旧白井町の町議経験を持つ横山さんが事務局長を務めた。