ここ数年、宮様主催のテーブルマナー講座に講師のひとりとして呼んでいただいている。その中で印象に残った「ひとりで生きるか、礼儀を知るか」という宮様の御言葉。どんなに頭がよくでも、ビジネスの才能があっても、ひとりでできることには限りがある。誰もが避けては通れない「食事の時間」。テーブルマナーもビジネスマナーの一部だ。大事なコミュニケーションのツールとしてどんどん活用していきたい。

 第一印象を決める上では、多かれ少なかれ「外見」というのが大きなファクターとなる。外見は、なにも身に着けているものや顔の造作に限らない。表情、姿勢、態度などの見た目から得られる情報も含まれる。メラビアンの法則によると、人の印象は93%が言葉以外から得られるのだそうだ。

 ビジネスシーンでは、恋愛のように「ギャップが良い」と思われるようなことはあまりないだろう。第一印象はなかなか変えられないというから、食事の場ではできるかぎり良い印象をもってもらいたい。しかも、食事の席ほどに、ビジネスの場において「人となり」を感じさせるような場所はないだろう。

もし接待でにぎやかな席に
案内されてしまったら…

 セミナー終了後に経営者の方々とごはんをご一緒させていただくことがあるが、年を重ねても第一線で仕事をしている方の多くは、食事のシーンでも例外なく伝え上手である。また、場の雰囲気を悪くしない、相手に必要以上の緊張感を与えないことに長けている印象をうける。

 たとえば、接待の場で、思っていたよりもにぎやかな席に案内されることもあるかもしれない。接待側としては焦って、「ここではダメだよ」「これでは困るよ」とサービスマンに伝えたくなるような場面だ。でも、クライアントに聞こえないように小声でいっても、言われた人の顔をみれば、なんとなくクレームを受けたらしいことはわかる。「否定語を使わないで同じ会話をする」これは、心にとめておきたいことだ。「静かなところに移りたいのですが」と、スマートにお願いの形で伝えることだってできる。

 また、サービスマンの方が「お荷物をお預かりしましょうか?」と声をかけてくださった際に「あ、大丈夫です」と断る人がいるが、その声掛けの意味するところは「お預かりさせてください」である場合も少なくない。たとえば、クライアントと仕事の話をしたくて、いっぱい資料が入ったビジネスバックを足元に置いてあるとする。これでは、サービスがしにくく、脚をひっかけるなど、トラブルも起きやすい。また、他のテーブルにカップルが多ければ、過剰な仕事の話はその日のお店の雰囲気を壊しかねず、「空気が読めない人」と思われてしまっても仕方がない。