中間評価を考える
「アベノミクス」の初速とその後

 民主党政権から、安倍晋三氏率いる自民党が政権を奪取することが見え始めたあたりが、いわゆる「アベノミクス」のスタート時点だろうが、その後の株価と為替レートへの影響は凄まじかった。

 大まかに、月末の終値を見るとして、野田首相が解散を「やりましょう」という前の10月末は、日経平均が8928円(端数切り捨て。以下同じ)で、ドル・円の為替レートは79円台だった。

 これが、4月4日に黒田新総裁率いる日銀が発表した通称「異次元緩和」の後である2013年4月末には、株価が1万3860円、為替レートは97円台となっていた。株価が約55%高、為替レートは約23%円安の猛威であった。

 この頃は、アベノミクス肯定派の勢いが凄まじく、アベノミクスに対する批判派の肩身が狭かった。唯一、慶應義塾大学の小幡績准教授が『リフレはヤバい!』(ディスカバー携書)という著書を発表して、一手に反対派を引き受けるような状態だった。

 しかし5月23日に、大きな変化が訪れる。1万5946円まで高値をつけた後に、株価が急落に転じ、翌月には1万3551円の安値まで調整し、為替レートもドルの高値では103円台まで進んだものが、翌月の最も進んだ時点では94円台まで円高に戻る。こうした変化が出たことで、アベノミクス否定派が活気づいた。

 その後、株価と為替レートは、相場用語的には大幅な調整後に、現在株価は1万4000円台半ば、為替レートは98円前後の水準に戻っている。現時点では、アベノミクスに対する肯定派と否定派が、共にそれなりに活発な意見を述べる状況となっている(どちら側にあっても、意見が言いやすくなった)。

 学者や評論家の言い争いは、彼らの仕事のうちなので、大いに活発に行うといいが、現時点でアベノミクスの現状をどう評価すればいいのだろうか。筆者は、アベノミクス(の主に金融緩和政策)に対して肯定的な立場であるが、「なるべく」客観的に評価してみたい。