フィリピン 2013年10月30日

フィリピン経済の底力
家族のために働く海外出稼ぎ労働者たち

海外出稼ぎ労働者の送金だけで国民全部を養える!

 たしかにリーマン・ショック以降、フィリピン経済を牽引していた海外投資が冷え込み、既存の日系会社の駐在員も激減し、マカティのカラオケでは閑古鳥が鳴いていた。従来の主要産業であったバナナ、パイナップル、ココナツなどの農産物の輸出では一国の経済を維持することはできない。そうなるとフィリピンは不況の真っ只中にいるはずだ。

 しかし、ここで忘れてはならないのがフィリピン最大の産業OFW(Oversea Filipino Worker=海外出稼ぎ労働者)の存在だ。国民の1割が海外に暮らし、彼らのフィリピンへの送金は軽く年間1兆円を超え、フィリピンの国家予算に匹敵する。この金額は公式な送金だけで、地下銀行経由の送金も加えるとその倍になるという。

大手デベロッパーの老舗、フィルインベスト社が開発中の大型コンドミニアム、LINEAR。2年足らずの異常な速さで立ち上がった【撮影/志賀和民】
最大手デベロッパー、アヤラ・ランドの配下、アビダ・タワーは首都圏に大型のコンドミニアム・プロジェクトを多数展開している。高級コンドミニアムの代名詞、アヤラの名前を冠せず、大衆路線を進め販売を伸ばした【撮影/志賀和民】


 仮に3兆円の外貨が毎年流入するとすると、約9千万人の国民が暮らすフィリピンでは1人あたり3万3000円になる。子どもも含めて1家族が5人とすると年間17万円、月々1万4000円(約7000ペソ)の収入となり、フィリピンではこの金額で家族の生計が成り立つ。すなわちOFWの海外送金は国民全部を養っていける金額に達しているのだ。

 もちろん、これらは国民に平均して配られるわけではないので、貧困層の一掃というわけにはいかないが、家族から1人のOFWを出せば、その家族は安泰で中間層の仲間入りをして、コンドミニアム・ユニットの購買層にもなるのだ。

 果たしてフィリピンのGDPには、このOFWの海外送金は考慮されているのだろうか。これらはフィリピン国内での生産の結果ではないから、この国の GDPにカウントすることはできないだろう。だから「フィリピンではGDP=購買力」ではないのだ。仮にフィリピン国内の経済が破綻しても、フィリピンは OFWの送金で国民全部が生き延びていける。

南ルソン高速道路の一部、マカティとアラバンを結ぶ2階建ての高速道路は15年の歳月をかけてようやく完成した。次のターゲットはマニラ首都圏を縦断して北ルソン高速道路と直結する工事だ【撮影/志賀和民】
メトロマニラの環状高架鉄道もようやく完成の運びとなり、マニラ首都圏の渋滞解消に一役買っている【撮影/志賀和民】

幸福の「資本」論|橘玲著 幸福の「資本」論 重版出来!
橘玲著

あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」。あなたが目指すべき人生は?
定価:1,650円(税込) 発行:ダイヤモンド社
購入はコチラ!
世の中の仕組みと人生のデザイン|橘玲のメルマガ配信中! 20日間無料 ザイでしか読めない!橘玲のメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」も好評配信中!
月額880円(税込)
いますぐ試す(20日間無料)
 

 

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲のディープなメルマガ
発売即重版決定! 橘玲の最新刊【幸福の「資本」論】発売!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。