内閣人事局は
毒にも薬にもならず

 政府は、今臨時国会に国家公務員制度改革法案を提出し、成立を目指している。最も注目を集めているのは、中央官庁の幹部公務員の人事を一元管理する「内閣人事局」の設置だ。ここで管理対象とする幹部人事は600人規模に上る。

 現行の幹部公務員人事は、正副官房長官らによる人事検討会議で扱われる。対象となっているのは、各省庁の事務次官や局長級の約200人。今回の改革法案では、幹部公務員人事として扱う対象を審議官級にも広げるため約400人増える。

 内閣人事局はいったい何のために設置されようとしているのか。

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 幹部公務員人事を内閣人事局に一元化することで、官僚の最大の関心事である人事権を握る。それにより、各省庁の官僚が自分たちの“省益”を優先して政策を企画立案したり、執行したりする動きを抑えられ、時の政権の優先課題を政府一体となって進めやすくなる

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 これが「内閣人事局」構想の根底にある理念だ。

 この「内閣人事局」に関連する法案については、実は2009年の旧自民党政権、その後の民主党政権の時も含めて、これまで3回も国会に提出されたが、いずれも廃案となった。実質的な官僚人事権を政治家に握られるのは嫌だという風潮は、霞が関の中央官庁に実在する。

 だからといって、これまでの内閣人事局関連法案の廃案が、官僚の悪あがきの結果だとか、官僚の陰謀によるものだとか、そういった下世話な主張に対して、私は非常に大きな違和感を覚える。

 この法案が最初に検討された2008年、実際に内閣官房で、内閣人事局も含めた国家公務員制度改革に係る検討作業に従事した経験からしても、決してそういうことだとは思えないのだ。