2012年のロンドンオリンピックのメイン会場周辺を回るウオーキングツアーに先日参加してみた。

 大会関係者のガイドが2時間にわたりさまざまな解説をしてくれた。料金は10ポンド(約1570円)。かつては工場による土壌汚染で印象が悪かった地区が、オリンピックを契機に再開発された。選手村の宿泊施設は売却されて新興住宅街となり、併設の巨大ショッピングモールは週末は賑わっている。

 ガイドの説明で特に印象深かったのは、「Tax payer(納税者)」と「Legacy(遺産)」という言葉が何度も何度も出てきた点だ。オリンピック終了後に、関連施設などの有形無形の「遺産」を売却したり、有効活用することで、「納税者」負担をできるだけ抑えてきたと彼はアピールしていた。

 というのも、ロンドン市民の多くはオリンピックの経済効果に極めて懐疑的だったからである。今の東京と対照的だ。思い返せば、筆者が滞在していた10年当時、金融市場関係者から、オリンピックで景気がよくなるという話を聞いた記憶はほとんどない。むしろ「たった2週間のイベントのために税金を無駄遣いするべきではない」という声のほうが多かった。

 運営当局は今年7月に、オリンピックに伴った経済活動は99億ポンドであり、投入資金89億ポンドを上回ったと発表したが、多くのメディアはその推計を疑うコメントを掲載していた。