「こんなにも建設的な話し合いをしている審議会があるのか」

 これは、厚生労働省の難病対策委員会をはじめて傍聴したときの筆者の率直な感想だ。

 医師や患者代表などで組織された委員たち、政治家、そして役人も、そこに参加するすべての人々が「この国の難病対策をどうにかしたい」という思いのもと、知恵を出し合い、妥協すべきところは妥協し、合意を形成している印象を受けたからだ。

 そこで繰り広げられていた光景は、利害の対立ばかりで、話し合いはいつも平行線をたどる他の部会とは一線を画していた。

 その難病対策委員会が、医療費助成のあり方を巡って、今、大きく揺れている。

民主党政権下で前進した
難病対策の法制化への動き

 難病は、原因不明で効果的な治療法が確立していない病気で、後遺症を残す恐れも少なからずある。患者数が少なく、薬を開発しても医薬品メーカーの利益にはなりにくい。なかなか治療法の研究が進まないため、「難治性疾患克服研究事業」に指定された難病については、国が費用を負担して原因の究明、治療方法の確立に向けた研究が行われている。現在は130疾患が研究対象となっている。

 その中で、治療がきわめて困難で、医療費が高額になる病気は「特定疾患治療研究事業」に認められ、患者の自己負担分が助成されることになっている。現在、この医療費助成を受けられるのは、ベーチェット病、悪性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など56疾患だ。

 だが、これらの事業に指定されていなくても、いわゆる「難病」と呼ばれる病気はたくさんある。世界中にある希少性疾患は、5000とも、7000とも言われているが、現状では同じように病気の痛みや重い治療費負担に苦しんでいても、対象疾患に認められなければ助成を受けることはできない。