英語、マレー語、中国語、タミル語
「みんな話せるから、べつにすごくない」

 筆者が住んでいるマレーシアには、宗教的祝日が多い。

 国教であるイスラム教の祝日はもちろん、主要マイノリティのインド系、中国系の人々のために、ヒンドゥーと中華の祝日もあるほか、クリスマスも休日となる。宗教的に寛容というか、大らかな国である。

 11月初旬はヒンドゥーのお祭り「Deepavali」(ディーパバリ)であった。別名「光の祭り」と呼ばれ、ヒンドゥー暦の第7月の初日、新月の日から6日間にわたって行われる。日本で言えば「正月」の感覚に近いかもしれない。

 正月と違うのは前日に断食をすることだが、当日以降はたくさんの料理をつくり、友人知人を招いて食事を振る舞い、親交を深めると共に、女神ラクシュミーをお祝いする様々な行事を行う。

 筆者の家族も、知り合いのインド系マレー人の女性から「Deepavali」の日に招待を受けた。彼女の手料理を振舞ってもらい、他のゲストの方々と楽しい時間を過ごすことができた。

 ちなみに彼女は、女手ひとつで男の子を育てつつ、インド料理の屋台をはじめ、それで貯めたお金を使って友人たちと出資し合い、オーガニックストアを始め、現在ではクアラルンプール近郊のショッピングモールに出店している。その友人たちも、タイ系、中国系、オーストラリア人など、非常に国際的だ。

 パーティでは、彼女の息子である小学校6年のM君と話をした。マレーシアの新学期は1月下旬で、学校は11月から長期休暇に入る。彼は小学校を卒業したばかりで、来年から中学1年になる。

 見るからに聡明そうなM君に「家ではずっと英語を話すの?」と尋ねると、「うん、ずっと英語。学校でも大抵英語だよ。でもウチの学校は、他にマレー語と中国語と、あとタミル語もやるから、マレー人とはマレー語で、中国人の友達とは中国語で会話することもあるよ」という。「すごいね」と筆者が言うと、彼はこう答えた。

「ううん、みんな話せるからすごくないよ」