今週、とんぼ返りで上海を訪問し、第2回社区企業と投資サミットと呼ばれるシンポジウムに出席して講演をした。

「社区企業」というと、日本人どころかおそらくほとんどの在日中国人もわからない新しい固有名詞だろう。

 ご存じのように、バングラデシュには、グラミン銀行(Grameen Bank)という銀行がある。同銀行は農村部で、マイクロクレジットと呼ばれる貧困層を対象にし、比較的低金利の無担保融資を行っている。2006年、同銀行の創立者でもあるムハマド・ユヌスとともに、ノーベル平和賞を受賞した。

社会問題に取り組む「社区企業」

 グラミン銀行のように、ある特定の社会問題を解決するためにビジネス活動を行う企業は社区企業と呼ばれるそうだ。私はコミュニティ・カンパニーと訳したい。NPO、NGO、慈善団体などで特定の社会問題の解決に取り組むケースもあるが、その必要とする経費や予算は寄付に依存しており、持続可能という視点から見ると、心細いところがある。自らのビジネス活動を通して、その利益を活用する形で特定の社会問題を解決しようとして生まれてきたのは社区企業だ。普通の企業との違いはもう一つある。つまり社区(コミュニティ)に根を下ろして、ビジネス活動を展開させることだ。名前の由来もそこから来ている。

 事前の案内ではシンポジウムの来場者は200名以上としていた。実際、上海財経大学のホテルを利用した会場に入ると、20代後半か30代前半の若い人に占領されたような感じがした。しかし、その時、私はまだ、大学生がかなり動員されたんだ、と思い込んでいた。

 初日午前の最初のテーマに組まれた私の講演は、山梨県清里にある萌木の村を実例にして、地域経済の活性化と「社区企業」型企業の役割を説明した。毎年10月最後の土日を利用して、地方の個性的な店を集めて萌木の村で行われている「私のカントリーフェスタin清里」もついでに紹介した。講演の最後に、「来年ぜひ、視察団を組んで、萌木の村と『私のカントリーフェスタin清里』を視察に来てください。私でよろしければ、喜んで現地までご案内します」。そこで大きな拍手が沸き上がった。のちに、司会者もこの拍手現象を取り上げ、中国市場がどれほど日本の製品を必要としているのかを強調した。