「守る資産運用」特集を斬る
資産を何から「守る」のか?

 現在発売中の『週刊ダイヤモンド』11月23日号では、「守る資産運用」のタイトルの下、資産運用を特集している。筆者は今年の5月まで、10年以上にわたって同誌で資産運用をテーマとして連載を持っていたので、いわば卒業生が母校に持つような関心もあって、手にとって読んでみた。

 ちなみに『週刊ダイヤモンド』は、古くから何度もマネー運用を特集している。筆者も何度かお手伝いしたことがある。かつて、巨額の残高を集めた毎月分配型の投資信託をこき下ろして、投信会社が編集部ではなく広告部に抗議してきたことなどを(セコイなあ!)、懐かしく思い出す。

 『週刊ダイヤモンド』の読者は、40代から70代くらい、ビジネスに関わっていて平均よりもお金持ちといった人々だろうから、「一攫千金!」(むしろ『週刊SPA!』のような貧乏な読者向けの雑誌が取り上げる)よりも、「守る」というニュアンスが読者の心に響くことは容易に想像できる。

 だがいったい、資産を何から「守る」のかが興味深い。表紙には「忍び寄る金利上昇と消費増税に負けない」「これで守れる! 市場下落に強いポートフォリオ」といった文字が並んでいる。

 特集は、アベノミクスで今後インフレが進むとすれば、資産が目減りすることの指摘からスタートしている。まず「将来のインフレに勝つには、リスクを取って運用しないとダメなのだ」と脅して、リスクを取った運用に関心を持たせるのは、一般のセールスや投資教育でも、よくある流れだ。

 ところが、バブルの崩壊とデフレで「投資から貯蓄へ」に向かった人がなかなか報われず、セールスにも調子が出なかったのが、昨年までの日本の投資家の状況だった。