税制優遇付きの私的年金制度(日本版IRA)の検討が始まった。わが国金融資産1600兆円の活性化を通じ日本経済の成長を促す狙いだ。検討の「きも」は税制である。1階、2階の公的年金だけでなく、3階、4階部分の私的年金(企業年金・個人年金)税制についてもあるべき姿(グランドデザイン)を描きながら、スピード感を持って検討、導入してほしい。

 11月9日付日経朝刊は、一面トップで、「非課税の私的年金創設 金融分野で成長戦略 貯蓄から投資促す」と題する記事を掲載した。

 金融庁・財務省共同で立ち上げる「金融・資本市場活性化有識者会合」(座長は伊藤隆俊東大教授)の議論を先取りした記事で、以下の内容である。

「米国で残高が5兆ドル(約500兆円)規模に達した個人退職勘定(IRA)を日本でも創設し、個人による株式や投資信託の購入を促す。IRAは一定の年齢まで個人が資金を積み立て、運用で得た利益を老後に受け取る制度」で、「金融庁の構想では、20歳以上65歳未満の個人が年間120万円程度の上限を設けて非課税にする。」

 実際、有識者会合は11月11日に第1回会合を開催し、年内に報告書を取りまとめる予定であると金融庁のホームページに明記されている。

 筆者は、本連載第28回の「個人の自助努力を支援する 私的年金=日本版IRA創設のススメ」で、この構想を取り上げたことがある。今後アベノミクス成長戦略として検討が始まるこの機会に、もう一度筆者の提案する日本版IRAの内容、趣旨、課題を整理してみたい。

 筆者の提案する日本版IRAは「(例えば)年間120万円という拠出額限度を設け個人が積み立て、一定年齢(例えば60歳)以降に引き出す場合には、運用益を含めて非課税とする」制度である。金融商品間の中立性を確保する観点から、預貯金、株式、株式投資信託等幅広い投資を認め、その中では損益通算も認める。