人の役に立ちたいという思いが生んだ飲み物

 ここでちょっと回り道をして、「カルピス」の生みの親についての話を聞いてほしい。

創業者の三島海雲氏

 カルピス社の創業者は三島海雲。1878(明治11)年、現在の大阪府箕面市にある教学寺に生まれた海雲は、多くの人の役に立ちたいという志を抱いて広大な中国大陸に渡る。そこで出合ったのが乳酸菌を使った飲み物だった。

 日本ではまだ牛乳でさえ珍しかった時代。乳酸菌の健康効果を身をもって知った海雲は、“おいしくて健康に役だつものを創りたい”と、帰国後、乳酸菌を活用した食品の開発に打ち込む。幾度もの失敗にも決して挫けることなく、ついに日本初の乳酸菌飲料「カルピス」を誕生させたのは1919(大正8)年7月7日のことだった。

 

初代の「カルピス」

 この海雲が常に語っていた“「カルピス」の本質”というものがある。それは、「おいしいこと」、「健康的であること」、「安心できること」、「経済的であること」の4つ。この精神はカルピス社の社員一人一人に今も受け継がれていると、講師の佐野さんはきっぱりと言う。「カルピス(株)特撰バター」のおいしさの秘密は、もしかしたら作り手の良心という、目に見えない、しかし最も根源的なところにあるのかもしれないという気がしてきた。

 

 

安全・安心への徹底したこだわり

 その良心を強く感じさせられたのが、バターや「カルピス」の原料となる生乳に話が及んだ時。カルピス社では工場近隣の牧場から取り寄せることにしている。搾りたての生乳を新鮮な状態で工場に運びたいという理由からだ。

 その短いルートの中にも、クーラーステーション(各牧場からの生乳を集めて出荷まで冷却しておく施設)での品質保持と、検査が組み込まれており、さらに工場に着いてから、もう一度品質検査を行うという徹底した品質管理が行われている。

 そして、エージングという熟成の工程で丸1日かけて寝かせることで“なめらか”になり、チャーニングという攪拌する工程の時に製造工程でできる「バターミルク」を加えることで、ミルク感がアップし“あっさりとしながらもコクのある味わい”を生み出しているという。

 こうして原料の段階からおいしさ、安心、安全にこだわり、「カルピス」31本分の生乳からわずか1ポンド(約450g)という、希少価値の高いバターは作られている。