10月中旬、東京都内の高級ホテルの宴会ホールは400人あまりの来客で熱気に包まれていた。東京・中国映画週間のレセプションの現場だ。来客の大半は日本に居住している在日中国人である。壇上の両側に飾られている大きなスクリーンには、式典の進行状況が大きくクローズアップされ、人々の視線を集めている。レセプションの進行が抽選による賞品のプレゼントに進んだときには、会場内の雰囲気は最高に盛り上がった。

石川県と山梨県の一貫した姿勢

 中国系大手家電メーカーのハイアール、化粧品メーカーのアルソア、家電量販店のヨドバシカメラに並んで、石川県の名前もスクリーンに大きく映し出されていた。「石川県賞」として金箔うちわ銘々皿、ゴールデンローション、九谷焼ペアワインカップの3点セットが2人与えられた。

 ご存じのように、昨年9月、島の領有問題が発生して以来、地方自治体にとって一番の悩みが観光に来る中国人客が激減したことだ。政府の誘導もあり、ほとんどの地方自治体は苦しい局面を打開するために、東南アジアや台湾などの地域に誘客の重点を置き、予算構成もそのように傾斜している。その意味では、東京・中国映画週間のレセプションに賞品の提供で自らの存在をアピールする石川県のような地方自治体が希少な存在となる。

 実は、昨年、島の領有問題が発生したあと、石川県と山梨県は厳しい情勢の中でも、中国のメディア関係者とインバウンド旅行を手掛ける旅行業者を招いて、山梨県北杜市、石川県金沢市と加賀市を一週間近くかけて、じっくりと取材してもらった。

 こうして今年に入ってから、香港の主要トラベル誌「中国旅遊」は、2回の特集を設けて、それぞれ石川県と山梨県の観光資源やビューポイントなどを紹介した。本コラムの「日中に新政権が発足し『台風』が去るまでに民間人ができることを実行してみた」という記事の中でも、石川県と山梨県が懸命に観光資源などをアピールしていたそうした姿勢を取り上げ、評価した。