生産性の向上には、
資源の再配分が欠かせない

 経済が持続的に成長していくためには、資本や労働のような生産要素(経済資源)が増えていくか、TFP(全要素生産性)という指標に表れるようなかたちで生産性の伸びを実現していかねばならない。このことは前回も説明した。

 少子高齢化で生産年齢人口が減少を続けていく日本では、労働の伸びで成長を実現することは難しい。それどころか、労働人口が縮小していくというマイナス成長のハンディを背負うことになる。当然、それを打ち消して余りあるTFPの伸びが必要となる。

 TFPは、生産性の伸びをもたらすさまざまな要因がすべて反映されたものである。いろいろな要因を含んだブラックボックスとも言える。その中身を精査し、どうすればTFPを引き上げられるか検討する必要がある。

前回述べたことの繰り返しになるが、TFPを引き上げる要素は3つある。1つめは「需要」、2つめは「資源配分の改善」、そして3つめは「イノベーション」である。この3つのそれぞれでどれだけTFPの拡大が可能か検討することが、日本の成長戦略をマクロから見るときの重要ポイントとなる。

 需要の重要性については、本連載でこれまで何度も指摘してきた。たとえ供給サイドが変化しなくても、需要が拡大すればそれだけでTFPは上昇する。過去10年、日本のTFPが低い水準で推移してきた大きな理由は、需要が低迷していたことにある。

 一定の設備や労働力の下で需要が低迷すれば、結果的に労働や資本の生産性も低下する。逆に、資本や労働などの供給条件が変化しなくても、需要が拡大して、より多くの供給をさばくようになれば、それだけ資本や労働の生産性は上昇する。つまりTFPも上昇するのだ。

 需要が拡大していけば、一定の資本や労働の下でのやりくりは難しくなっていく。そこで企業も、より効率的な供給が行えるような改革を進めるだろうし、不採算部門から採算部門へ資源を動かすという資源の再配分も進めるだろう。こうした動きもTFPを引き上げることになる。需要はTFPを決める重要な要因なのだ。