橘玲の世界投資見聞録 2013年12月5日

映画『ゴッドファーザーPART3』に描かれたバチカン・スキャンダル
[橘玲の世界投資見聞録]

 ギルディ大司教は、金融スキャンダルでバチカン銀行が7億ドルを超える巨額の負債を抱えたことで窮地に陥っている。マイケルはそれを利用して、バチカンが実質的なオーナーとなっている国際的な投資会社インモビリアーレの株式を6億ドルで買い取る取引を持ちかける。マイケルはマフィア関係の事業を清算し、多国籍企業のオーナーになることで、父ヴィトー・コルレオーネから譲り受けた使命を完成させようとするのだ。

 ところがインモビリアーレの取締役会が、マイケルによる買収を阻止しようと画策する。取締役会にはギルディ大司教のほかに、銀行家のフレデリック・カインジックと政界の大物でマフィアのドンでもあるリーシオ・ルケージがいた。カインジックはアンブロジャーノ銀行頭取ロベルト・カルヴィ、ルケージはP2創始者のリチオ・ジェッリとキリスト教民主党のジュリオ・アンドレオッティ元首相をモデルにしている。

 マイケルはその後、バチカンでランベルト枢機卿と出会い、兄フレドを粛清した罪を告解する。新教皇に選出された直後に急死するランベルト枢機卿は、もちろんヨハネ・パウロ1世となったアルビーノ・ルチアーニのことだ。

 「教皇暗殺」を知ったマイケルは、カインジック(カルヴィと同様にロンドンのブラックフライヤーズ橋に吊るされる)、ギルディ大司教(バチカン内で射殺)、ドン・ルケージ(殺し屋が眼鏡をこめかみに突き刺す)を次々と処刑するが、自身も相手の放った刺客に狙われ、最愛の娘(ソフィア・コッポラ)が凶弾に倒れる。娘の亡骸を抱えて天に咆哮するアル・パチーノの名演は印象深い。

 このように『ゴッドファーザーPART3』はイタリア現代史とヤロップの『法王暗殺』を下敷きにしているため、予備知識がないと物語の展開についていくのが難しい。これが前2作に比べて評価が高まらなかった理由だろう。アメリカの観客にとっても、ローマやバチカンの事件は他人事なのだ。

暗殺説への反論

 バチカンのサン・ピエトロ大聖堂の脇に歴代教皇の墓所がある。地下の霊廟にはヨハネ・パウロ1世の名を刻んだ大理石の墓があり、巡礼団が必ず立ち寄る名所となっている。そこでは10代の少女までが「これが殺された教皇様?」と訊く……。

 暗殺説があまりにも有名になったことに困惑したバチカンは、教皇の死から10年を経てようやく反論を試みようとする。

 ジョン・コーンウェルは司祭を目指して神学校で7年間の教育を受けたが、悩んだ末に信仰を捨ててケンブリッジに進学し、新聞社に勤めた後、小説家として名声を得た。

 1987年10月、コーンウェルはバチカンの広報部長から驚くべき提案を受けた。教皇を含め誰にでも自由に取材していいという条件で、ヨハネ・パウロ1世の死の真相を調べてもらえないかというのだ。そのなかにはもちろん、これまで沈黙を守ってきたバチカン銀行総裁ポール・マルチンクス大司教も含まれる。内部調査では誰にも信用してもらえないのだから、中立で客観的な外部の人間に任せるしかないとバチカンの広報部長は決断したのだ。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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