橘玲の世界投資見聞録 2013年12月5日

映画『ゴッドファーザーPART3』に描かれたバチカン・スキャンダル
[橘玲の世界投資見聞録]

 またコーンウェルは、事件当時、イタリアに派遣されていたFBI捜査官からの証言も得ている。捜査官は、FBIが組織を挙げてマルチンクスの疑惑を徹底的に調査したことを認めたうえで、犯罪の証拠はなにひとつ発見できず、「彼の潔白を確信している」と述べたのだ。

 コーンウェルの緻密な調査によって、暗殺説の決定版とされたヤロップの著作には重大な疑問があることが明らかになった。そのうえFBIがマルチンクスの潔白を保証してもいる。

 だがコーンウェルは知るゆえもなかったが、このときバチカン自身が内部調査によって、バチカン銀行とイタリア政財界との癒着やアンブロジャーノ銀行破綻の責任を認めていた。

 この事実は、コーンウェルの調査から20年を経て白日の下に晒されることになった。当時、バチカン銀行の問題処理を担当していたレナート・ダルドッツィ師が、遺言によって4000点に及ぶメモや文書をジャーリストに託したからだ。

 そこには、バチカン銀行がジュリオ・アンドレオッティ元首相をはじめとする有力政治家や財界人、フィクサーなどのために秘密口座を開設し、それがマネーロンダリングや贈賄に利用されていたことが証拠とともに示されていた。

参考:「ぜったいに知られてはならない」教会の秘密を守るバチカン銀行

 コーンウェルは『バチカン・ミステリー』で、ヨハネ・パウロ1世の死についてひとつの大きな謎を残している。

 先に述べたように、教皇は重度の塞栓症で、日常的に抗凝固剤を服用していなければ生命にかかわる状態だった。教皇の世話をしていた秘書や修道女も定期的に薬を飲ませていたと証言している。

 バチカン内には薬局があり、教皇居館の薬はすべて帳簿につけられている。コーンウェルが薬局に行くと、担当者はその帳簿を見せてくれた。

 だが不思議なことに、教皇の薬を記載した帳簿は、パウロ6世(ヨハネ・パウロ1世の前任者)のページからいきなり後任のヨハネ・パウロ2世へと飛んでいた。帳簿には番号が振られ、ページが切り取られた形跡もない。

 それでは、ヨハネ・パウロ1世が服用していたはずの抗凝固剤はどこから取り寄せたのだろうか。それがもし偽薬であれば、暗殺のような手段を使わなくても、教皇はいずれ病死しただろう。

 だがヴェネチア以来の教皇の侍医は、バチカンからの要請があるにもかかわらず頑として取材を拒否し、コーンウェルはついにこの謎を解くことができなかった。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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