「みずほ銀行はなぜあんなに見事に墓穴を掘ったのだろうか?」

 こんな質問を受けた。

 オリコの暴力団組員への融資で金融庁から業務改善命令を受けてからのみずほ銀行の一連の行動に関しての質問だ。

 質問したのは、一流の経営者だ。自分ならあんな不様にはならないとでも言いたげだ。果たしてそうだろうか。あの一連の行動は、みずほ銀行特有のことだろうか。

 一連の行動を整理してみると①業務改善命令を受けて広報は記者に対するレクチャーだけで済まそうとした。②親しい記者だけを呼び、頭取に説明させた。③追い込まれて副頭取が記者会見し、『頭取は知らない』と答えた。④頭取がようやく記者会見をし『知っていた』と答えた。すわ、隠蔽、検査忌避かとなり、問題は金融検査にまで及んだ。⑤国会に呼ばれ、認識が甘かった、年間報酬1億2000万円もあるのにそれを半分にした処分で、『妥当』と居直った。云々。

 初期対応を間違ったために、まるで坂を転げ落ちるように、みずほ銀行側にしてみれば『想定外』の事態に進んで行った。

 『想定外』の事態を呼びこんでしまう危機管理、クライシスマネジメントの失敗だ。今回の事態は、みずほ銀行特有の失敗ではなく、企業一般に言えるのではないか。

薩摩藩の『郷中教育』

 歴史家の磯田道史さんが、『歴史の読み解き方』(朝日新書)の中で面白い指摘をされている。それは言わば『想定外』を無くす教育。その例として薩摩藩の『郷中教育』を紹介されている。

 薩摩藩は、文字を読める人が少なく、子どもたちは先輩から、文字ではなく実践的な教育を受けていた。それが『郷中教育』で、先輩からの問いに対して子どもたちはあらゆる事態を想定して実践的な回答を探し出し、答えるという。とにかく子どもたちに考えさせる教育。