ネット上の言論活動について、青少年がセックスや暴力に関連した有害情報にアクセスするのを防ぐという名目で、政府に広範な介入権限を与えるばかりか、政府の排除命令などに従わない者には刑事罰まで科そうとする自民党の“高市法案”(内閣部会・松村龍二部会長と青少年特別委員会・高市早苗委員長の合同法案)に対し、ついに、同党の内外から異論が出始めた。

 ヤフー、マイクロソフトなどインターネット関連の5社が23日になって反対意見書を同党に提出したほか、自民党の総務部会(山口俊一部会長)は関連業界に自主ルール整備を義務付ける対案(“山口私案”)をとりまとめた。自民党は、高市法案と山口私案の間の調整を急ぐ考えで、早ければ月内にも国会に法案が提出される見通しだ。

「知る権利」が阻害され
自粛ムードが広がる懸念

 問題の高市法案は、本コラムが4日付けの「ネット規制にばく進する自民党」などで、いち早く、そのリスクの大きさに警鐘を鳴らしてきたものだ。概要をおさらいしておくと、(1)内閣府に設ける青少年健全育成推進委員会に「有害情報」を判定する権限を与え、(2)有害情報の排除のため、同委員会や総務大臣、経済産業大臣に、インターネットサービスプロバイダーやサイト管理者に対する立ち入り検査や、削除命令を出す権限を付与、(3)命令違反者には、1年以下の懲役刑や100万円以下の罰金といった刑事罰を課す―ことなどが柱となっている。

 ただ、その規制対象になる「有害情報」については、(1)性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼす情報、(2)著しく残虐性を助長する情報、(3)犯罪、自殺、売春を誘発する情報、(4)心身の健康を害する行為を誘発する情報、(5)心理的外傷を与えるおそれがあるいじめ情報、(6)非行又は児童買春等による青少年の被害を誘発する家出情報――と6つの考えが漠然と示されているに過ぎない。そして、肝心の具体的な判断は、政府に設置する予定の青少年健全育成推進委員会に委ねるとしている。

 しかし、この法案は、憲法で保障された「国民の知る権利」を阻害するリスクと背中合わせだ。例えば、何らかの情報が書き込まれ、それが青少年にとって有害な情報だと判断された場合、政府が命令を出し、その書き込みを削除させるか、書き込みがあったサイトそのものの閉鎖を迫ることになってしまう。その結果、影響は、青少年にとどまらない。成人も、その情報を閲覧できなくなる可能性が強いわけだ。